作:愚者皇さん
「かは……ぁ………」
焼け付くように身体が熱い…。なのに、どうしてこんなにも寒いのだ…。
力が入らない…
もはや指一本動かす事すらできず、剣を握る事さえ許されないのか…。
目の前に、敵がいるというのに…。
共に戦った仲間を…虫けらの様に殺した奴が笑いながらこちらを見ているというのに…!!
「あれほどの魔力の塊を受けて生きてるとは…なかなかに興味深い…。だが、所詮は人間である以上無力だ…。誰一人として守る事はできない…」
黒衣の男がこちらを見下ろし、冷めた笑みを浮かべる。
「きさ…ま……」
「そう…、その顔だよ……。絶望と憎しみに満ちたその顔こそ…私が求めるものだ」
「よく…も、…よくも仲間を……!!」
「アラニア黒翼騎士団団長ヴァレリア=フェン=ティベリウス。お前なら…私の人形として申し分ないだろう……」
「誰が…貴様の……下に付くものか……!!」
「強情な奴だ…愚かな……」
すっと、頭の方に腕を近づけてくる
「さようなら…ヴァレリア。次に目が覚めたときは、君には新たな名と生が与えられているだろう…」
「や……」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
叫びながら反射的に起き上がる…。
辺りは炎に包まれており、既に倒壊が始まっている。
「はぁ……はぁ……」
(なんだというんだ……それよりも)
思考する事を一時中断し、アリシアの方を見る。
どれほど経ったのか…、もはや息をしているのかすら分からない状態だった…。
「ちくしょ…う……」
「諦めるのは早いぞ主よ」
「!!」
振り向くと、白いドレスに身を包んだ女性が立っていた。
「アルティシア…」
「お前に渡した天魔剣、そいつを渡すんだ」
「……………」
無言のまま、腰の鞘に収めてある剣を抜く。
鞘から抜かれた剣は刀身から薄く青白い光を放っている。
その剣をアルティシアと呼んだ女性に手渡した。
「何をするつもりだ…」
「お前に渡した天魔剣レストレイル…この剣は生と死を司る力を持つ剣だ。その剣を使えば生かす事ができるだろう、時間がないので早い所始めるぞ」
そういうと、アリシアの元に近寄り、彼女に剣を突き立てる。
剣は音も無く突き刺さり、突き立てられた箇所からは不思議と血が一滴も流れない。
突き立てた後、アルティシアは愚者皇が聞きなれない言語で何やら詠唱を始めた。
「ηυξτγ…」
彼女の言葉に呼応して、青白い光が剣を通じて身体を包み込み、やがて剣が青い光となってアリシアの身体の中に入っていく。すると傷口が瞬く間に消えていき、光がおさまると完全になくなっていた。
「さて、さっさとここから出るぞ…。主一人じゃ大変だろうからな、我が道を開ける…主はその娘を抱えて後をついて来てくれ」
「すまない…」
そう言って、未だ意識の戻らないアリシアを抱え上げる。それを合図にアルティシアが呪文を発動させる。
「凍てつく息吹よ、吹き荒れる嵐となりて薙ぎ払え!! 氷嵐撃(セルティ・トゥランペ)」
彼女を中心に吹雪が巻き起こり、立ちふさがる炎を消し去っていく。
「急ぐぞ。この建物はあまり長くは持たん…」
「分かってる…」
3人は崩れ続ける闘技場を走り抜ける。
長い石造りの通路を駆け抜け、大きな広間へと出る。
そこには行く手を阻むように下級の悪魔が5体立ちふさがる。悪魔は彼等に気づくと、一斉に襲い掛かってくる。
「邪魔だ…!!」
アルティシアは何も無い空間から一振りの剣を取り出し、悪魔の一体を一刀で切り伏せる。断末の声を上げる間も無く崩れ落ちる。
「どけ…!!」
それに続く様に、愚者皇が右から襲い掛かってきた悪魔の顔面を踏みつける様に蹴りつける。
さらに、それを足場代わりに身体を捻って跳躍。
勢いをそのままに、アルティシアの背後を襲おうとした別の悪魔に踵を叩き込む。グシャリッと鈍い音を立てて悪魔の頭が潰れ、そのまま床に叩きつけられる。
最後に、着地すると同時にアルティシアが残りの2体を斬り捨てていた。
これら全ての動作は並の人間からすれば瞬き一つする間、1秒にも満たない一瞬の出来事…。
彼等は何事もなかったかの如く、そのまま走り去る。
「ぅ…ん……」
「起きたか…?」
「ぇ、えぇ!!……あ、あの…その……」
「喋るな!!叫ぶな!!、舌を噛むぞ」
「は、はいぃ…!!」
目が覚めたばかりで状況が状況が呑み込めずに困惑するアリシアに一喝する。と同時に、天井から瓦礫が崩れてくる。
「しっかりしがみついてろ…、振り落とされるなよ…!!」
愚者皇の言葉にアリシアは無言でうなづき、しっかりとしがみつく。
アルティシアが次々と瓦礫を剣で斬り払いながら道を切り開いていくが、落ちてくる量に追いつけない。
(ぐっ…流石にきついな……)
人一人抱えながら落ちてくる瓦礫を避けていくのは、渇きによる反動が未だに抜けない今の状態ではかなり負担が大きい。だが、それでも駆け続ける。
しばらく駆け続ける内に、木製の扉が遠くに見えてくる。
「あと少し……!!」
「…この気配は!!」
次の瞬間、天井が爆発したように砕け散り、瓦礫と共に何やら大きな物体が落ちてくる。
全身が血の様に赤く染まった、山羊の頭を持つ化け物…。だが、化け物の持つ気配には覚えがあった…。
「arudo…か」
『見ツケタゾ…愚者皇』
「はっ…、ついに化け物になるまで堕ちたか…arudo」
『ファンファン様ヨリ授カッタ“力”…、コレデ貴様ヲ血祭リニアゲテクレル!!』
arudoと呼ばれた化け物が巨大な火球を作り出し、彼等に向けて放つ。
「くそっ…!!」
愚者皇とアルティシアは咄嗟に身を逸らして、大きく横っ飛びに避ける。直後に火球が叩きつけられ、轟音と衝撃が辺りに撒き散らされる。arudoから離れた場所に下がり、抱きかかえていたアリシアを降ろす。
「いいか…ここで待ってろ」
「ぇ…」
「お前を助けると決めた…、ここで死なせはしない」
そう言い放ち、再びarudoの元へと戻ると同時に、トゥレイドファングを召喚する。
「さて主よ…、どうやら向こうは何やら深い恨みを持っておるようだが…」
「さぁな…、恨みなら数え切れないほど受けてるからな」
『愚者皇ォォォォォォォォ!!』
arudoが雄叫びを上げながら突進を仕掛けてくる。
「ったく…こっちはボロボロだってのによ」
「そうぼやくな…さっさと蹴散らして脱出するぞ」
突進を避け、左右から同時に斬りかかる。しかし、彼等の刃がarudoの肉体を切り裂く事がなかった…。
「なっ…!!」
「ぬ…」
『無駄ダ…、ソノ程度ノ攻撃ハ効カヌワ!!』
木の幹ほどはある大きな腕を薙ぎ払う様に大きく振り回して殴りつける。二人は避ける間もなく直撃を受け、壁に叩きつけられる。
「がっ…!!」
「ぐっ…」
『ドウダ愚者皇ヨ…、コレガ俺ノ新タナ“力”ダ…』
arudoが蔑む様な表情を浮かべながら愚者皇に近づき、片手で掴み上げる。
「はっ…、大した事ねぇな……」
『マダ無駄口ガ叩ケルカ。イイダロウ…』
開いた方の腕に巨大な火球を作り出し、そのまま叩きつける。愚者皇はそのまま直撃を受け、かろうじで意識はあるものの、ずたぼろの状態でぐったりとなる。
「愚者さん!!」
『ナンダ貴様…』
駆け寄ってくるアリシアにarudoが気づき、そちらの方を見る。
アリシアは睨みつけるように見るarudoに一瞬怯むが、すぐに睨み返すような表情に変わる。
「愚者さんを放せ!!」
『ホゥ…、人間風情ガ指図スルカ…イイダロウ』
「ぇ…?」
arudoは大きく振りかぶって掴んでいる愚者皇をアリシア目掛けて投げつける。不意打ちにも似た状態で判断が遅れた彼女は、そのまま投げられた愚者皇と共に壁際に叩きつけられる。
『貴様等ヲマトメテ消シ飛バシテヤロウ!!』
両腕を大きく振り上げると、先ほどとは比べ物にならない大きさの火球が作り出され、そのまま二人目掛けて投げつけてくる。
「……………」
その時、愚者皇の脳内に再びあの光景が目に映った。
『所詮は人間である以上無力だ…。誰一人として守る事はできない…』
あの冷めた様な笑みを浮かべながら、蔑むように言った憎き男の言葉…
絶望を叩きつけ、人間としての全てを奪った復讐すべき相手…
(…冗談じゃない)
歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がって火球の前に立ち塞がる。
身体が燃える様に熱い…
頭が悲鳴を上げるように痛い…
何かが身体中を物凄い勢いで駆け巡っていく…。
『ヴァレリア=フェン=ティベリウス。お前なら…私の人形として申し分ないだろう……』
(違う…!!俺は…)
先ほどの戦いで枯渇していた魔力が急速に満たされていく。それだけではない、自身の持つ魔力の限界量がこじ開けるように、無理矢理広げられていく。
焼け付くような熱さと悲鳴を上げる様な痛みは無理にこじ開けられる事による反動だ。
そして、半ば力を失っていた他の魔神達の力が復活していく。
(俺は……!!)
強く握り締めたトゥレイドファングに膨大な魔力が収束されていく。
「俺は貴様の操り人形じゃねぇぞ…ファンファン!!」
叫ぶと同時にトゥレイドファングを振り下ろす。
振り下ろした刃の先から黒い風の刃が撃ちだされ、迫り来る火球を跡形もなく消し飛ばした。
『ナンダト…!!』
「我を忘れてもらっては困るぞ…!!」
背後から機を伺っていたアルティシアがarudoに斬りつける。先ほどと違って魔力を込めた一撃は鋼鉄の剣すらもはじく皮膚をやすやすと切り裂いた。
『グォオォォォォォォッ!!』
一瞬の隙…。
愚者皇は見逃す事無く一気に肉薄する。
『愚者皇ォォォォォォォォッ!!』
「arudo…」
押しつぶすようにして左右から両腕を振り下ろしてくる。
その腕を、横薙ぎに払う様な一撃で両腕を切り落とす。右足を軸に身体を大きく捻りながら地を蹴るように跳躍。arudoの頭上に刃を突き立てる。
『グォアァァァァァァァァァッ!!!!』
「俺は愚者皇(ファンファンの操り人形)じゃねぇ…。奴への復讐を決意した魔人、ヴァレリア=フェン=ティベリウスだ!!」
突き立てた刃に全体重をかけて、縦に線を引くように一気に斬る。arudoの身体は縦一文字に両断され、その場に崩れ落ちた。
「ふぅ…」
軽く息一つ吐いてトゥレイドファングを元に戻し、アリシアの方に戻る。彼女は呆然とこちらをみたまま反応がない。こころなしか、足ががくがくと震えている。
「大丈夫か…?」
「ぇ…えっと…、その……」
「もしかして立てないのか…?」
尋ねると、アリシアはコクコクと無言でうなずく。それを見て小さく溜息をつき、そのまま抱きかかえる。
「?ぇ!?、ぁの…その……」
「…どうかしたのか?」
顔を赤くしたまま黙り込んでしまうアリシアの様子に、訝しげな表情を浮かべる。
愚者皇が彼女を抱きかかえている体勢は、いわゆるお姫様抱っこと言う奴だ。だが、本人がそれに気づく事は無い。彼にしてみれば、運ぶのが楽だからそうしてるだけだからである。
「なにをしておる!!さっさと行くぞ!!」
「あぁ、悪い…」
アルティシアに急かされ、入り口を蹴り破って外へと出る。
外に出ると同時に、屋敷ががらがらと崩れだす。彼等はある程度安全な場所まで退避した後、振り向いてその光景を眺めていた。
「さて…久々に顕現したせいで疲れた…。我は戻らせてもらうぞ」
そういって、アルティシアは音もなくすっと姿を消した。それに続いて愚者皇はアリシアを降ろし、その場で仰向けに倒れる。
流石に体力の限界がきていたのか、今までの疲労が一気に圧し掛かる。
「…すまなかったな」
「えっ…?」
不意の言葉に、アリシアは一瞬戸惑いながら愚者皇の方を見る。彼は視線を変える事無く、言葉を続けた。
「助けに来たのに…、お前を死なせる様な目に遭わせてしまった…」
「…いいんですよ。だって、助けに来てくれるって信じてましたから」
「そうか…」
「ところで…、どうやって戻るんですか?」
そう言われて、緩慢な動作で起き上がって見回す。すると、少し離れた場所に自分がこの館に来る際に使った船が止めてある船着場が見えた。まだ、船はあるようだ。
「さて…あの船を使わせてもらうか」
「そうですね」
二人は船着場の船を使い、孤島を後にした。
二人が反対側の岸辺に着くのと同じ頃に、拓ノ心とレオンが森からやってくるのが見えた。しかも、彼等の後ろに見慣れない法衣を纏った若い男女が二人付いてきている。
「愚者殿!!」
「お前等、無事だったか!!」
拓ノ心、レオンがこちらに気づき、駆け寄って無事を確かめてくる。
「レオン達はどうしたんだ…、途中で見えなくなったみたいだが」
「あぁ、どうやら結界によって隔離されたみたいでござったが…、あの方々が拙者達を助けてくれたのでござるよ」
そういって、先ほど後ろをついてきていた二人の方を見る。
「セレン=ティアノートと申します。そして、彼が…」
「クレイン=ゼノサキスです」
「見た所、聖職者に似ているが…。異端審問局とは違うみたいだな」
「私達は彼等と同盟を結んではいますが、基本的に体系は違いますので…。ここで話をするのもなんですし、一度街の方へと戻りましょう」
セレンの言葉に一行は同意し、一度街へと戻る事にした。街へ戻る頃には朝日が昇りつつある時間帯だったが、相変わらず街は人の気配が感じられなかった。
セレンの話によると、大分前にオルハの手によって滅ぼされていたのだという。
とりあえず、彼等は近くの民宿(だった場所)で休息を取る事にした。
「近くの街まで2日はかかりますので、1日だけでも休息を取りましょう」
「しかし、この辺りは魔物に襲われる危険がござらんか…?」
「そういう意味で、この辺りに簡単な清めの結界を張ろうと思います。そうする事で、魔物達の巣窟になる事を防げるはずですから」
そういう訳で少し席を外しますと言葉を続けて、セレンは外に出た。クレインも後に続いて外に出る。
「んじゃ、俺は適当な食料とかを調達してくるぜ。おい拓ノ心、お前も手伝え」
「なっ、拙者もでござるか…?」
一息ついて酒を注ごうとする手を止めた拓ノ心がレオンに尋ねる。しかも、杯は自分のと愚者皇の分が用意されていた。
「当たり前だろうが、ちったぁ一仕事付き合ったって罰はあたらねぇよ」
「しかたないでござるな…」
「じゃあ俺もてつd「お前は休んでろ…」」
愚者皇の言葉を遮るようにレオンはきっぱりと断る。
「お前はただでさえ無茶するからな…、嬢ちゃんと一緒に待ってろ」
「それじゃあいってくるでござる…。トホホ…せっかくの酒が……」
「だぁ、ぐだぐだ言ってんじゃねぇ…!!さっさと行くぞ」
というやり取りをしながらレオン、拓ノ心の二人も外に出てしまった。
残されたのは、愚者皇とアリシアだけである。
「………愚者さん」
「ん?」
「ヴァレリア…って言うんですね、愚者さんの名前」
「…………!!」
一瞬、愚者皇の表情がこわばる。が、再び元の表情に戻る。
「……愚者皇って言う名はな、ファンファンという奴が付けた名前だ」
「ファンファン…?」
「…俺から全てを奪った、憎むべき敵だ」
「………ごめんなさい、聞いてはいけない事聞いて」
「いや、気にするな…」
「……………」
「……………」
お互いに黙り込んでしまい、気まずい雰囲気が辺りを包み込む。
「あの…」
「ん…?」
「ヴァレリアって呼んでもいいですか?」
「…………?」
アリシアの言葉の意味が分からず、ただ首を傾げる。
「愚者さんの名前…ちゃんとあるんだったら、誰か一人でも呼ぶ人がいてもいた方がいいかなって…」
「別に構わない…好きに呼べばいいさ」
「はい…♪」
「……………」
愚者皇ことヴァレリアは、嬉しそうに答える彼女を見ながら、やはり意味が分からずに首を傾げるしかなかった。
それからしばらくして、他の人々が戻ってきた。心なしか拓ノ心の顔が疲れて見えるのは、レオンに荷物持ちをさせられたせいもあるのだろう…。そして、アリシアから愚者皇の本名を聞いた時、予想通りというか分かりきっていた反応を返してきた。
「これは驚いたでござる…」
「お前にもちゃんとした名前があったのかよ…」
「…何か凄く引っかかる言い方だが、どっちで呼んでもらっても別に構わない」
ぶっきらぼうに答えるヴァレリア。
「結界の方はあらかた張り終えました…。これで魔物の巣窟になる事はないとは思います」
「お疲れさんっと、こっちもまともに食えそうな食料は見つけたぜ。…っても、干し肉程度だがな」
「そうですか。…ところでヴァレリアさん、少しお話しがあるのですが…」
「ん…?あぁ、別に構わないぜ」
「ここでは何ですので、外で…」
そう言って街の外れにある森の入り口まで連れてこられた。
「それで…話ってなんだ?」
「用件は2つあります…。一つ目はオルハがどうなったのか、そして…」
セレンが一度言葉を切り、殺意の込められた眼差しでヴァレリアを睨む様に見ると、言葉を続けた。
「貴方を討つ為です…」
「………まぁ、そんな感じがしないでもないとは思っていたが」
「貴方から、強い闇の魔力が感じられます…。このまま放って置けば、必ず私達に牙を剥きます…」
「だから殺すっていうのか…短絡的だな」
セレンの殺意の込められた眼差しをさほど気にする事無く、ヴァレリアは言葉を続ける。
「あんたの質問についてだが、一つ目。オルハはどこかに逃げた…、どこにいったのかは知らない。そして二つ目…あんたは俺を殺す事はできない」
「………何故ですか」
彼の言葉に、さらにセレンの表情が険しくなる。
「俺は、あんたの敵じゃないからだ」
「…どういう意味ですか?」
「あんたと同じ目的だ…。といっても信じやしないだろう?」
言葉の後にトゥレイドファングを召喚する。それに続くように、セレンも白銀に輝く槍を召喚する。
「そういう事は…私を倒してから言ってください!!」
「上等…!!」
両者同時に仕掛けようと…
「何してるんですかヴァレリアさん!!、セレンさん!!」
「「!!」」
するのを止めた。
声の方を見ると、アリシアが怒りをあらわにした表情で二人の方へとやってくる。
「……アリシア?」
「どうして…ここに?」
「どうしてもこうしてもありません…!!」
「「………………」」
あまりの気迫に二人はただただ黙るしかない…。しかし、彼女の怒りが収まる事はなかった。
「セレンさん、ヴァレリアさんは私を助けてくれました。だから、その人を傷つける様な事をしないでください。あと、ヴァレリアさんもヴァレリアさんです!!そうやって、すぐ暴力に訴えるのは止めた方がいいです!!」
「「…………すまん(すみません)」」
結局、二人はアリシアに謝るしかできなかった。
とりあえず武器を収めた後、ヴァレリアが尋ねる…
「んで、なんでアリシアがこんな場所に来ているんだ?」
「えっ!?えっと…、それは…その……」
すると、先ほどから一転して顔を真っ赤にし、俯きながらごにょごにょと呟いてしまった。
「……………」
「と、とにかく…!!喧嘩はよくないです!!」
「ぁ…あぁ、悪かった…」
「レオンさんがそろそろご飯だって言ってたので、早く戻りましょう」
「お、おい…!!」
そう言うと、アリシアはヴァレリアの腕を自分の方に引き寄せて、そのまま引きずるように歩き出す。
「…彼女は、いつもこんな感じなのですか?」
「…知らん」
困惑しながら尋ねるセレンの言葉に、彼はそう答えるしかなかった。