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第44話:魔神を統べる王

作:愚者皇さん


-From 42-
「ここは……?」

気がつくと、何も無い真っ暗な闇の中にいた…。
そう、セプテリオスが出てきた時と同じだ。だが、以前と違うのは、何かが欠けてしまった…そんな感覚だ。
しばらく歩いくと、玉座が目の前に見えた。
豪勢な作りの大きな玉座には、誰も座っていない。さらに、玉座の周囲には7振りの大小様々の剣が囲む様に浮いている。

「来たようだな…愚者皇」

凛と透き通るような声が聞こえ、ふっと…一人の女性が玉座に現れた。
年は自分よりやや上。自分と同じ真っ白な髪に真っ白なドレスに身を包み、瞳は血の様に紅い…。
しかも、よくみると誰かに似ている。

「…お前は誰だ」
「誰とはつれないの〜…」
「だから、お前は誰なんだ!?俺の事を知ってるみたいだが、俺はお前を知らないぞ…」

目の前の女性はきょとんとした表情でこちらを見ている。

「おい…いきなりなんだよ…」
「そうか…貴様、記憶がないのだな…」
「なんなんだ…?お前、やけに俺の事を知ってる口ぶりだな…。セプテリオスと同じ魔神か?」
「やれやれ…よほど自分の事を覚えてないみたいだの〜」

溜息混じりに呟きながら軽く首を横に振った後、真剣な表情でこういった。

「私の名は魔神皇アルティシア…。お前は私の忠実なる僕であり深淵の魔人、愚者皇だ…」
「深淵の…魔人…?」
「まぁ、仕方あるまい…。邪神王によって私の国が攻め込まれた時、お前は私を生かす為に命を落としたのだからな…」
「何の…話だ…?」
「少し、昔話をしよう…」

そういって一度言葉を切り、話し始めた。

「昔、私は魔界を彷徨っていた一人の剣士と出会った。そやつは人の身でありながら魔界に住む魔神達を屠り、私の所にも来た。しかし、さしものそやつも私の前には敗れ去ったがな…」

昔を懐かしむ様にして話を続ける。

「そいつは今まで挑んできた奴等とは違った。まるで死ぬ事を恐れない、いや…自らの命を捨てても構わないという目をしていた…。私がトドメを刺そうという時にも、そいつは表情一つ変えなかった…。それが、おまえだよヴァレリー…。それと私と出会った時、お前の中にはすでにセプテリオスは存在していたのだよ…」
「!!」

アルティシアと名乗った女性の言葉に、彼は驚愕する。

「私はお前に愚者皇の名を与え、そばに仕えさせた…」
「………………」
「お前は本当に人間とは思えない位に感情を表には出さなかった…。ただ、私の命ずるままに動く人形だったよ…。逆に、セプテリオスは人間臭い奴だったがな…」
「初耳だな…」

彼女も、まったくだと同意するように呟く。

「だが、お前が死んであの邪神神官に復活させられてからは、おまえ自身も多少なりとも人らしくなったな…」
「……………」
「お前が人間の女に惚れ込むとはな…」
「!!」

明らかに動揺する彼をみて、彼女はクスクスと笑う。

「アリシアとか言ってたな…。奴の話だと、お前はあの娘の事になると駄目になるとな…」
「……………」
「だからこそ、お前を守る為に力を使い切ってしまったのだろうな…」
「………馬鹿だな」

自分の中に眠っていた魔神を思い出し、そう呟く。

「あの少女を助けに行くのだろ?」
「………あぁ」
「正直言って、今のお前が行った所で結果は同じだ…」
「それでも…俺は行くしかない…。あいつには、助けてもらった恩義がある…」

彼はあどけない笑顔で自分を呼ぶ少女を思い浮かべた。
人ではない自分を助け、刺客に襲われる身であるにも関わらずずっと一緒にいた…。
彼女の存在があったからこそ、復讐のみに生きる自分が人としての心を失わずに済んだのかもしれない。

「お前にとってその娘、よほど大切な存在らしいな…」
「どうだろうな…それは分からない……」
「まぁいい…。とりあえず、近くに来い…」

そういってアルティシアは手招きをする。近づくと、青く澄んだ長く細い刀身の剣を手渡した。

「これは…」
「7つの魔剣を束ねる剣、天魔剣レストレイル…。これをお前に託す…」
「何故だ…?」
「お前は私を助ける為に犠牲になったが…、結果として私は邪神王によって封印された…。長い年月は私の力を奪っていき、お前を助ける為に残りの力を使い果たした。もはや私が消滅するのは時間の問題だ…」
「それで…?」
「私が、お前の内なる魔神となる…。セプテリオスが失われた影響で、お前の中に眠る他の魔神も力を失ってしまってるからな…」
「だが、お前の事だ…ただで貸してくれるわけが無いだろ?」
「私が求めるのはお前の時間…。私と契約を結べば、お前は刻(とき)の呪縛に囚われ、永遠に老いる事ができない身体になる…」
「あいつを…アリシアを助けれるなら……それでも構わない…」
「だが、忘れるな…。私を得る事による“渇き”は大切な者と近づけば強くなる…」
「………事が…できな…った……だ」
「何かいったか…?」
「いや、なんでもない…」

そういってアルティシアはすっと右腕をあげて、愚者皇の前に突き出す。

「我、汝とここに魔血の契約を結ぶ…。我、愚者皇を主とし、我が血肉、我が魂を授ける…」

まるで旋律を紡ぐ様な口調で言葉を続けていく。それと同時に彼女の身体が白く輝きだし、光の粒子となって愚者皇の身体を包み込んでいく。
光が消えた後、彼の左腕に紅い石が埋め込まれ、それを中心に白く輝く7つの剣を模した紋章が刻まれる。

「契約は完了だ…愚者皇」

彼女の声が遠くなっていく…。
それと同時に、自分の意識もそこから遠のいていった…。


気がつくと見知らぬ城の玉座の前に立って、夢で受け取った剣を掴んでいた。

「やっと、我等が主が帰ってこられました…」

振り向くと、そこにはボロを纏った人影が深々と頭を下げていた。

「お前は…」

彼がドルフ首都でであった世捨て人だ。

「!!!と申します…。呼びづらければ、“預言者”といってもらって構いませんので。それよりも…、よくぞ帰ってきてくれましたアルティシア様…」
「…知っていたのか?」
「えぇ…、あのお方が貴方様と一つになられたのは、私にも分かります…」
「だが、俺は愚者皇だ…。それ以上でも、それ以下でもない…」
「私は、貴方様があのお方の傍に仕えていた事は知りません…。ですが、あのお方が貴方様に従う以上、我々も貴方様に従わせてもらいます…」
「…勝手にしろ」

「愚者殿!!」
「おい、大丈夫なのか!?」

みると、拓ノ心とレオンがこちらに駆け寄ってくる。

「あぁ、とりあえずはな…。だがここはどこだ?」
「まぁ、それは拙者から話させてもらうでござるよ…」

愚者皇は、拓ノ心とレオンからこれまでのいきさつを聞く事になった。

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