作:邪神王ウロボロス
拓ノ心は華やかで騒がしい城下町を通り過ぎ、桜花城の堀まで辿り着いていた。
拓ノ心は早速衛兵を見つけ、声をかけた。
拓ノ心「拙者、北部鞍馬武士団長細川拓ノ心謙次である、大殿に御呼びがかかり鞍馬より只今参上仕ったでござる。」
衛兵「ははっ、武士団長殿、書状か何か示す物はお持ちでございすか?」
拓ノ心は衛兵に書状と印籠を見せた、すると、衛兵は堀の向こう側に旗を振った。
衛兵「書状、印籠、本物である事を確認いたしましたので、少し御待ちくださいますようお願い申しあげます。」
拓ノ心はうなずいた。
拓ノ心「うむ。」
向こう側の衛兵も旗を振り返し、堀の向こう側から大きな橋が倒れるように降りてきたのであった。
ギギギギギギギギガタン!!
衛兵「この度はわざわざ鞍馬より遠路はるばるご足労願い実にご苦労様でした、向こう側の堀も総べて橋は降りてありますので、さぁ、お進みくださいませ、武士団長殿。」
拓ノ心「うむ、守備は万全ご苦労でござる。」
拓ノ心は橋を渡り桜花城の六つある大門の一つの前に到着した、そこには屈強な肉体を持つ豪腕な男が一人立っていた。
拓ノ心「久方ぶりでござるのう。」
拓ノ心が屈強の男に声をかけると、男の口が笑みを浮かべて動いた。
屈強の男「ふっ、そうじゃのう、拓ノ心、御主も元気じゃったかぁ。」
拓ノ心「拙者は御主とは違い、平穏な新婚生活を送っていたでござるよ。」
屈強の男「ぉお、御主、身を固めたらしぃのぉ。」
拓ノ心「無駄話はまた今度ゆっくりと話そう、今日は大殿様より御呼びがかかって参上仕ったでござるよ。通してもらうぞ清十郎(せいじゅうろう)。」
そう、屈強豪腕の男の名前は尾上清十郎影定、天剣六神衆の一人である。
清十郎は、遥か遠方の中華国家【仁】に伝わる伝説の神刀、太古の昔にヤマト神国に入ってきたとされる、とてつもなく太長い薙刀『神龍偃月刀』を持って大門を守っているのである。
この神龍偃月刀は清十郎程の体格と豪腕がなければ、並大抵の者では扱う事は不可能であろう、清十郎であれば軽々と何の苦もなく扱える伝説の武器である。
清十郎「あいわかった、通るが良い、しかし、このわしを倒してからじゃ、嘘じゃ。」
清十郎は寒い冗談を言ったが、拓ノ心は素無視で中へと進んでいった。
清十郎「・・・」
拓ノ心は城の門へ到着し、衛兵に書状と印籠を拝見させ城の中へと進んでいった。
すると、城の大廊下に容姿端麗なる細身の男が立って拓ノ心を見ていた。
拓ノ心「これはこれは、大陰陽師の優希殿ではござらんか、あいもかわらず無口でござるな。」
優希「フッ・・」
そう、彼こそが宮廷陰陽師の優希尋である。
拓ノ心「拙者は先を急ぐので行くでござるよ。」
その時、優希の口が軽く動いた。
優希「私が案内しましょう。」
拓ノ心は普段まったく喋らない優希が喋った事に驚きながら彼について行く事にした。
拓ノ心「あっ、ありがとうでござる。」
この桜花城は複雑に作られている、これぞまさに迷宮ともいうべき城であり、階段が実に多いのである。
二人が幾度か階段を上ったとこで再び大廊下が現れた、そして、障子をあけると部屋があり、また障子がありの繰り返しでようやく二人は『大殿の間』(おおとののま)へ辿り着いたのであった。
この城の迷宮な仕組みや、大殿の間(正式名称鳳凰の間)までの障子と部屋の連続な繰り返しは戦などで万が一に攻め入られた場合の防衛策の作りであるが、他にも『麒麟の間・朱雀の間・玄武の間・青龍の間・白虎の間・黄龍の間』が存在する、そして、戦時には各間には影武者が配備されるのである。
二人は大殿の間に入ると優希はささっと無言で大殿の御前に進み、そのまま大殿の側へ進み、大殿の座する左横に座った。
大殿の右横には宮廷風水師が座している、そして御前の右には五老中が座しており、左には大老が座している。
大殿「拓ノ心、遠路はるばるご苦労であった。」
大殿は右にある肘掛に肘をついて、閉じた扇子をもっている。
拓ノ心は深々と頭を下げている。
拓ノ心「ははっ!!」
大殿「ここに拓ノ心、この度、そちを城へ呼んだのは他でも無い。表を上げよ!!」
拓ノ心「ははっ!!」
拓ノ心は頭を上げて大殿の顔をじっと見ている。
大殿「そちに外国へ出向いて外の様子を調べてきてもらいたいのじゃ。」
拓ノ心「ははっ、しかし。」
大殿「わかっておるは、そちの心配なのは鞍馬武士団であろう、半蔵に申しつけ書状を頼道へ持って参らせた、武士団は副団長の頼道に任を命じてあるわぁ、安心せぇ。」
拓ノ心「ははっ!!ありがたき手回しでござります、しかし、拙者が行くにはただ様子を伺いに行くだけなのでござりましょうかぁ?」
拓ノ心はじっと大殿の顔を見上げた。
大殿「では、本題に入ろう。」
拓ノ心はじっと大殿を見つめながら話を聞いている。
大殿「うむ、御主は影忍軍団の先代頭領を存じておろう、行方不明で急遽半蔵が16代目頭領となった話は知っておろう?、そう、影忍軍団15代目元頭領が外国へ逃亡したという話が奴の故郷の忍が白状したのじゃ。」
拓ノ心はあまりの衝撃の事実に驚愕していた。
拓ノ心「まさか、闇が外国へ・・奴ほどの男が」
大殿の口が再び動いた。
大殿「拓ノ心、そちに命ずる!!ただちに外国へ旅立ち、真実を見定め、闇を探して捕らえてくるのじゃ!!そして外国の情勢も見定めてこい!!まずは怒流賦帝國(ドルフ帝國)方面から行くがよい」
拓ノ心は身体の振るえが止まらなかった、決して怯えている訳ではなく、武者振るいであった。
大殿「もしも闇が暗黒面に堕ちておる場合は闇を斬り捨てる事もやむおえん、すべてはそちに委ねるとする。」
拓ノ心「ははあぁっ!!」
突然、大殿が右手を上げた、奥から衛兵が大太刀を持ってきた。
大殿「これをそちに委ねる!!」
拓ノ心は大太刀を手に取って見つめている。
拓ノ心「こっこれは・・・」
大殿「斬鉄剣じゃ、その大太刀はそちが使えばきっと真に目覚めるであろう、持って行くが良い。」
拓ノ心「ははっ!!ではっ!!」
拓ノ心は斬鉄剣を持って城を後にして、隣国ドルフ帝國へ入ろうとしていた。
拓ノ心は壁を見つめて考えていた。
拓ノ心(この壁、どうしたものか?どうすれば中へ入れるのか?門へ行ったとしても入れてはもらえんでござろうなぁ)
拓ノ心の目がふと大太刀に目がいった、そう『斬鉄剣』であった。
拓ノ心「やってみるでござるか。」
斬っ!!
壁に大きな切れ目が浮いたと思えば、すっとずれていき大きな穴がぽっかりと開いた。
拓ノ心「さすがでござる。」
拓ノ心はとぼけた顔でやる事は凄いのであった、早速、拓ノ心はドルフの国境壁の穴を抜け中へ入っていったのであった。
拓ノ心は国境越えを終えた後、しばらく険しい山の中を歩いていた。
拓ノ心「知らぬ地ではまったく先が見えぬでござるな。」
太陽が沈み、あたりに暗黒瘴気が満ちてきている。
拓ノ心「さて、ここらで一息、野宿と言いたいとこでござるが・・不穏な気配を感じるでござるな。」
夜もふけ、あたりには妖しげな霧がたちこめてきだした。
ガサガサガサ!
茂みの中で何かが動いた。
拓ノ心「どうやら客人のようでござるな。」
ガサガサガサ!
縦横無尽、周囲のいかなる場所からも気配を感じる、拓ノ心は既に囲まれているようだ。
悪鬼「ぐびゃびゃぁ・・」
目の前に不潔によだれを垂れ流す悪鬼が立っている、後ろにも、横にも、周囲は悪鬼だらけだ。
悪鬼「じゅび・・じゅび・・に・・にん・・にんげ・・ん・・ぐじゅび・・」
拓ノ心は斬鉄剣の鞘に手を添えて目を閉じている。
悪鬼「ぐびゅ・・・食っちま・・・ぉ・・」
拓ノ心の周囲は悪鬼だらけだ、恐らく総勢約二十数匹はいてるであろう。
拓ノ心はまったく動かない、静かに目を閉じている、あたりの静寂を悪鬼達が掻き乱している。
悪鬼「ぐじゅびぃ・・食べちぇほじぃのかにぇ・・じゅび・・動・・かにぇ・・」
一匹の悪鬼が動いた、が?、動いた悪鬼の胴から上が地面に落ちた。
ドサッ!!
悪鬼「うじょでじぉ・・・・」地面に落ちた上半身が喋ると息絶えた。
そう、悪鬼達には拓ノ心が動いていないように見えていたが、神速の如き一瞬で斬鉄剣を抜いて鞘に戻していたのであった。
拓ノ心はすっと目をあけると深呼吸をして言った。
拓ノ心「ふぅーぅ、めんどうでござるなぁ、一気に奥義で終わらすでござるよ。・・・かかってくるでござるよ。」
今度は拓ノ心は斬鉄剣を鞘から抜き大きく構えている。
悪鬼達が一斉に飛び掛った!!
グジュビェ!!ボボバビュ!!
拓ノ心の片方の手にも小太刃が握られていた、無数の手が拓ノ心の背後から見えたように映ったその時だ!!悪鬼達が一瞬で微塵の肉片と化していたのであった。
拓ノ心「修羅心影流表奥義、阿修羅斬舞、また、つまらぬ者を斬ってしまったでござる。」
拓ノ心はそっと鞘に剣を収めた。
場所は変わり、とある砦の水晶のある部屋に一人の男がたっている。
その薄暗い部屋で妖しげに青く光る水晶を眺める男は漆黒の鎧を纏う一人の騎士のようだ。
キノピオ「これはドルフの端」
そう、ここは邪神教団所属の神殿騎士団の砦であり、彼こそ騎士団長のキノピオである。
キノピオ「この男は、面白い、泳がせておこぅ、この闇水晶、色々と見せてくれるわ。」
闇水晶、この水晶はいかなる事も見透かす能力があり、世界にスパイを送らなくても他国の情報を見て盗む事が可能とされる。
今回はどうやらドルフへ進入したばかりの拓ノ心が映っていたようだ、この闇水晶はキノピオの私物でありファンファンは何も知らない。
キノピオは再び闇水晶を覗き込んだ。
キノピオ「ほほぅ、愚者皇はドルフにいるのか、まぁ良い・・フッ」
キノピオは含み笑いを浮かべて部屋に鍵をかけて出て行ったのであった。