作:愚者皇さん
メルド教国。
3教国の一つともいえるこの国は、一人の襲撃者をによって落とされんとしていた。
「第4騎士団全滅!!第5の門を突破されました!!」
「馬鹿な…、たかが一人だぞ…!!」
「現在、神の庭にて第5騎士団と交戦中です。ですが長くは持ちません!!」
城内ではめまぐるしく戦況が伝えられているが、いずれも喜ばしくない報告ばかりだった。
メルド教国は大陸南部に位置する3教国の一つで、他の2教国よりも広大な土地に恵まれている。それゆえ、城もかなりの規模に渡って作られている。
ウェル・カリスと呼ばれるこの城はその規模と何人たりとも近づけぬ巨大な城壁、それと同時に民を導く神の如き煌煌しさから、神の降り立つ城と呼ばれている。
そして、彼が今いるのは神の庭と呼ばれるとてつもなく広い中庭にいた。
中庭で倒れている騎士団はざっと3000はくだらない。
さきほどまで自分が倒した騎士団を眺めると、デスラグナロクはさも退屈そうにしながら自身の3倍はある大きな斧を肩に担いでいた。
いたる所に髑髏の装飾の施された巨斧。
「やれやれ…、これじゃあ肩慣らしにもなりゃしないな…」
さらに彼が身につけている骸骨の甲冑との組み合わせは、禍々しさというよりも不気味さが漂っていた。
デスラグナロクは手近にいた騎士を蹴り飛ばして、先へと進む。目の前には何度も目にした白い城壁。
城壁の上には300の弓兵がこちらに弓を向けている。
「ひゅう…、さすがは神の城と言われるだけの事はあるな…。これだけの兵力を中で戦わせる事ができるんだからな…」
さも嬉しそうに呟きながら言葉をつづける。
「だからこそ…、我等が主を迎える城に相応しい…。とはいえ、あまり派手に暴れてはせっかくの城が台無しだな…」
少し派手にやり過ぎたのか、今まで通ってきた城壁は襲い掛かっていた軍勢もろごとぶち壊してしまってるのだ。
「まぁ、多少の損害はしかたないか…。どうせここを落とせば問題ないしな…。さてと…」
瑣末な事と判断した彼は、呪文の詠唱に入る。
浮き上がる魔法陣から転移系の魔術。
「んじゃ、親玉を狩りにいきますか!!」
魔方陣が輝きだし、彼の姿は光に消えた。
「な…なにがおこったんだ!?」
弓を構えていた弓兵達は唖然とした様子でただただ見るだけだった。
「馬鹿な…、たかが一人の邪教徒に200年もの間守られてきたこの国が落とされるというのか…!?」
メルド教国の教皇、ゲオルグは怒りに満ちていた。先代の教皇亡き後、24という若さで教皇になってまだ5年しか経ってない。
「このままでは、歴代の教皇に申し訳がつかない…レイル!!」
「はっ…」
レイルと呼ばれた老齢の騎士がゲオルグの元にやってくる。
「邪教徒を迎え撃つ…。私も出るぞ」
「教皇自ら!?」
レイルは何を馬鹿な事をと言いたげな表情で叫んだ。
「レイルよ…お前の言いたい事は分かる…。しかし民を国を守る教皇として、神に使える1人の僕として、私も剣を取らねばなるまい…」
そう言ってゲオルグは玉座から立ち上がり、後ろの壁に掛けてある一振りの剣を取った。
澄んだ蒼の細い刀身の剣、まるで見る者の穢れた心を洗い流すかの如き神聖さが漂っていた。
「その剣は…」
「聖剣リファード。かつて、一人の聖者が魔神達の皇帝が使っていた7つの魔剣の一つを持ち帰り、神々の力によって打ち直したと言われるものだ…。リファードという名はその聖者から付けられたそうだ」
「ほぅ…、それはそれは…こんな所で見つかるとはな〜」
「何者だ…!!」
レイルが振り向くと、骸骨の甲冑を纏った騎士が立っていた。
「こんな所に、我等が主の剣が見つかるとはな…。これは一石二鳥とはこの事をいうんだな」
「貴様か!!神の城を荒らす邪教徒は!!」
「邪教徒?…おいおい、自分達の信仰する神と違うものを邪教扱いするのはよくない事だぜ。だがま、本当に邪教と言われるものは実際にいるがな」
「お前か…私達の国を滅ぼそうとしてるのは…」
「いや、滅ぼすんじゃなくて貰いに来ただけだぜ。あと、その剣は返してもらおうか」
「貴様…!!」
レイルが剣を抜き放ち、デスラグナロクに肉薄する。
「とあぁぁぁぁぁっ!!」
「甘いぜ…」
振り下ろされた剣は巨斧に阻まれる。
「何…!?」
「太刀筋は悪くない…が、所詮は人間だ」
ぶぉん…という風の薙ぐ音が聞こえた直後、レイルは物言わぬただの肉片と化した。みると、デスラグナロクの手に持つ巨斧にべっとりと血と肉片がこびりついている。
「レイル!!」
「さぁて…」
ゆっくりとした歩みでゲオルグに近づく。
「あんたには悪いと思ってるが、死んでもらうぜ」
「邪教徒がぁぁぁぁっ!!」
聖剣で切りかかるゲオルグ。
「アビス・イーター…」
デスラグナロクが一言呟いた後、ゲオルグは地面に開かれた大口に飲み込まれて消えた。
「ふぅ…、これで我等の主を迎える城は手に入ったか…」
「さすがはデスラグナロク…」
「!!!か…」
振り向くと、ボロの人影がそこにいた。
「少し荒っぽい様でしたが…、無事落とせた様ですな」
「まぁ、俺にかかればこんなものだな…。それと、こいつは手土産だ…」
そう言って、聖剣を!!!に渡す。
「これは…」
「そう、我等が主の使っていた七魔剣の一つだ。人間共の手でその力をほとんど奪われてるが、お前なら戻す事など容易いんだろ?」
「えぇ…。幸いにもここは“門”に近い場所…、門より出でる魔力を受けて再び息を吹き返しましょう…」
「さてと…」
「どこへ行かれるんですか?」
王の間から立ち去ろうとするデスラグナロクに尋ねる。
「主が眠る者のもとにな…。どんな奴か見ておきたいからな」
「やれやれ…、手荒な真似はくれぐれも…」
「分かってるぜ…。ここはお前に任せた」
そう言って立ち去っていった。
「さて…」
!!!は聖剣を玉座に置き、なにやら呪文を唱える。すると聖剣から薄い紫色の光が現れ、玉座の隣にふわっと浮き上がる。
「これで、あと6つですか…。全ての魔剣を揃え、我等が主を迎える為の準備をせねば…。我等の主が再び戻った時、世界は我等魔界の者達の手に…」
!!!はそこに在るべき存在を待つ様に、誰もいない玉座を眺めていた。