第3話:邪神教の再興

作:ファンファンさん


-From 2-
平和な時代、邪神教は国家はもとより他宗教からも排斥・迫害を受け、その存在は歴史の表舞台からは消えた。

とある場所に秘匿された地下神殿。そこには、巨大な石像が横たわっていた。邪神王ウロボロス・・・・・終末の魔蛇を模した像だ。
男「陛下、民は苦しんでおりますな・・・・・」
邪神王「余がこの世の神である以上、当然の事よ。土地は枯れ、水はよどみ、民は苦しむ。そしてその負の力が余にとって最高の贄である・・・・・しかし、貴様もおかしなやつよ。人間が余に味方するなど、暗黒魔大戦ではありえぬことであった」
暗黒魔大戦。闇と光、二つの勢力に二分された二万年前の戦だ。人間と天使は光に、妖魔と悪魔は闇に。地上と天上、そして魔界をも巻き込んだ大乱である。魔界の神であった邪神王は光の軍勢に破れ、肉体を魔界に、精神を天上へと封印された。
そして二万年の時を越えて、邪神王は甦ったのだ。処女の肉体を器として。
男「は。人は変わるものにございます。力のある方を崇め、そしてお守りする・・・・・自然の摂理、というものではございませぬか?」
男は会釈したまま薄く笑むと、邪神王もまた陰惨な笑みを浮かべる。
邪神王「道理だな。煮ても焼いても食えぬやつよ」
男「恐れ入ります」
男は黒の神官衣を着ていた。そして邪神教の証たる“自らの尾を噛む大蛇”の意匠をこらした特殊なペンダントを首から下げている。邪神教信徒の特徴ある正装だ。ただし男の周囲に従う黒の神官たちは彼からも一歩下がり膝をついている。邪神王には最高位の、そして男にもまた敬意を払っている様子だった。
邪神王「そういえば、貴様の名をまだ聞いていなかったな・・・・・名は、なんと申す?」
男「は。おそれながら、邪神教最高司祭位を戴くファンファンともうします」
邪神王「うむ・・・・・ファンファン、か。なんとも変わった名前よな」
ファン「おそれいります」
邪神王「ファンファンよ。余はまだ甦ったばかり。貴様は余の目となれ。貴様の知識と技量、魔力を存分に余のために使うがよい」
ファン「は。微力ながら我が力、全てを邪神王様に捧げます」
邪神王「早速だが一働きしてもらう」
ファン「御意にございます」
ファンファンは頭を深く垂れながら邪神王の声を聞いた。

翌日、万余の軍勢が野を埋め尽くした。各地に潜伏していた邪神教徒、そして闇の眷属・妖魔たちだ。
ファン「ウロボロス陛下の命である!蹂躙せよ!」
崖の上に立ったファンファンは下知した。目指すは地下神殿から最も近い王国・アラニアである。
“ミレニアム”と呼ばれていたアラニア王国の首都、アランは闇の軍勢の前に三時間の激闘をもって陥落。平和という怠惰に慣れきった王国の騎士・兵卒は悉く殺され、辺りには死体の山がいくつも出来た。国王夫妻は見せしめのため磔の上に火刑に処せられた。
その光景を王城・グレインホールドから見下ろすファンファンは口早に伝令に下知する。
ファン「無抵抗の者は殺すな。支配階級だけを殺せばよい」
そう厳命すると、伝令たちは各部署へと走り、各隊の長に伝える。
ファン「さあ、始まりだ・・・・・」
ファンファンはテラスから見える北の空を仰ぎ見た。その口もとはさも愉快げに薄い笑みが浮かんでいる。
その空の下には、昨日建国されたという新興国家・ドルフ帝國があった。

-To 愚かなる者の裏切り…-

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