作:最上さん
「どうなってるんだ!」
指揮官が叫んだ。
「全艦員対衝撃用意!何かにつかまれ!」
ドルフ軍の艦隊はパニックに陥っていた。
鯆級飛行戦艦「鯨」が急に失速。
次の瞬間にはコントロールを失って旗艦の鯆級飛行戦艦のオリジナルでもある「鯆」に突っ込んでこようとしてた。
「三番艦鯨!応答せよ!どうなってる!?このままだとぶつかる!早急に進路を変更せよ!繰り返す!三番艦鯨!」
通信手がひたすら同じ文面を連呼する。
「鯨、応答ありません!」
「監視カメラがあるだろ!鯨内の監視カメラの映像をこっちに回せ!とにかく今は状況把握だ!」
艦橋内が慌ただしい。いくつ物叫び声が飛び交う
「今アクセスしています!・・・30%・・・50%・・・75%・・・90%・・・今メインモニターに映します!」
・・・
・・・・・・
さっきまでの慌ただしさは一変し一瞬の沈黙。
メインモニターには血まみれで肉の破片のようなものの転がる通路や艦橋が映し出されている。
モニターの両脇のスピーカーからは銃声と金属音が鳴り響いている。
「どういうことだ・・・」
最上がモニターを睨みながらつぶやいた。
通信手がマイクを取りまた文面を繰り返した。
「三番艦鯨・・・どうなっている!こちらのモニターには血塗れの艦内が映し出されている!誰か応答可能なものはいないのか!?」
メインモニターに映る艦内スピーカーから壊れたラジオが鳴るように掠れて雑音交じりになった通信手の問いかけがただ寂しく流れでる
そしてまたしばらくの沈黙・・・かすかに聞こえていた銃声さえ聞こえなくなっていた。
今は外のドラゴンの鳴き声と艦砲が発する低いうめき声のような爆音だけが聞こえている。
沈黙を裂く様に最上がつぶやいた。
「鯨艦内は全滅か・・・」
それを聞いて艦橋内の者の数人は青くなる。ここが戦場だということを思い出した。
「鯨までの距離100m切りました!」
観測長に言われて全員がハッとする、
「全速前進!緊急回避だ!無重力装置に傷が付いたら艦隊ごと全滅だ!急げ!」
「他艦に連絡!三番艦「鯨」艦内は全滅!構わず敵に集中せよ!」
「鯨までの距離50m、エンジン出力最高値達しました。」
「南南西の方角に艦首を向けろ!」
「全員衝撃用意!来るぞ!」
一瞬、地面に叩きつけられるかのような重力と激しい遠心力を感じた次の瞬間、
鯆は南南西に艦首を向けながらしながら一気に急上昇をする。
3秒としない次の瞬間鼓膜が破れんばかりの破裂音と耳をつんざくような高く鈍い金属音が響く、
艦の窓から見える外にはすぐそこに在る鯨の側面と激しい火花。
吹き飛ばされたかのような強い衝撃が走り艦が大きく傾く、
大きく揺れ震える巨大な鉄の塊は衝撃を受けながらなお急上昇を続ける。
目を強く閉じ、歯を食いしばる艦橋要員達、
何時間にも感じられた一瞬が過ぎるとそこには静かな艦橋
破裂音も、金属音も聞こえない。
振動と衝撃で割れた窓の外には紫の瘴気の中を地面に向かって堕ちて行く三番艦「鯨」の姿。
「生きている?」
誰かがつぶやいた。
「外の連中を倒さなければ死んだも同然だ。」
誰かが答えた。
ほっと溜息をつきすぐに立ち上がり格持ち場につく艦員達。
「こちら艦橋、艦内状況を至急報告せよ!」
艦内スピーカーから通信手の声が聞こえる。
すぐに帰ってくる状況報告、艦内の死亡者0人、負傷者50人・・・
2万人近い艦員が居る中では奇跡的な数字だ。
「負傷者は早急に救護室に、他は引き続き敵に攻撃を!」
「一番艦「鯆」より他艦へ通達!本艦は無事である!三番艦は何らかの攻撃により全滅!注意されたし!以上!」
一難去ってまた一難、敵のドラゴンが次々に攻撃をしてくる。
「目的地、元ガイド公国首都まで残り100km切りました。」
だんだんと濃くなる瘴気、魔殺石が瘴気を吸収しなければ元ガイド領に入り込むことすら不可能に等しい。
鳴り続ける砲撃音、機銃の破裂音から主砲の重い爆発音までが全滅した三番艦に鎮魂歌を唱う
次から次へとどこから来るのか大量のドラゴン、倒しても倒しても限がない。
「怒-伍式突撃銃を貸せ、限がないから一気に片付ける」
「は、・・・え!?」
何人もの艦橋要員が振り返って最上を見る。
「早くしないと犠牲が増えるだろ、急げ!」
ほとんど半ギレ状態である。
突撃銃を取るとすぐに割れた窓から破片を落とし艦の甲板へ出る
「揺れないように気をつけろよ、」
そういい残して艦の上のほう、アンテナやレーダーの付いた鉄塔を上り、構える。
10km近くはなれてほとんど点になった敵のドラゴンに標準をつける。
かなり長いロングバレルとサイトスコープをその場で取り付け、一瞬の躊躇も無しに打つ、
吐き出されたたった一発の特殊加工の鉛球は10km離れたドラゴンの左眼に直撃する。そのまま堕ちていくドラゴン、
すぐに目標を変え今度は3kmほど離れた場所に居るドラゴン、
今まさに2番艦「鯱」に攻撃をしようとしているレッドドラゴンをスコープを覗きもしないで撃つ、
今度は右目に当る、だが中級クラスのドラゴンはそれくらいでは死なない、そのまま反対側の左目に当てる、
こっちに気づき火を吐こうとしたドラゴンの口の中に10発近い弾丸を撃ち込む、
中から外に向かって突き抜けたドラゴンの後頭部から黒い血しぶきが出る。
そのまま堕ちていくのを確認せずに次のドラゴンに狙いを定め
撃つ、撃つ、撃つ
一人で10体近く倒したところで弾切れ、弾を取りに戻ろうとしたとき、ドラゴンが火を吐いた、
当る、そう思ったとき何かが目の前に出た。
40cmくらいの分厚い盾を構えたグラントがそこにいた。
「帝王とも在ろう方が一人でこんなところに出られては困りますよ。あなたが死んだら誰がドルフを守るんです?」
言われて返す言葉が無くなる。
「助けるつもりが助けられたか・・・」
無理しないでみててくれれば十分ですよ。
別の兵士が隣にいた、怒ー零弐式狙撃銃を構えてさっきのドラゴンに攻撃をしている。
周りを見回すと他にも何人も居る。同じように狙撃銃を構えてドラゴンに攻撃を加えている。
「まだ若いんじゃから、無理はしない事じゃの」
砲撃長が苦笑いをしながら下の階段から上がってきた。
「皆・・・悪かったな、指令・・・変更するか、被害を最小限にしてここを突破、目的地まで到達だ!」
元ガイド公国首都跡まで、残り50kmを切っていた。