作:邪神王ウロボロス
深い闇が広がる空間・・・・
そこには何も無いように思えた・・
しかし、何も無いのではなかった。
暗い闇の中で視界で確かめる事ができなかっただけであった。
よぉく見ると、そこには数え切れない程の黒いモヤのようなものが遠くに渦巻く一つの穴のような場所へと向っていっている。
ここは何処なのか、そう、ここは、冥界への入り口であった。
そして、この黒いモヤは全て、現世で死んでしまった亡者達の行列とも思えた。
それは全て、魂であった。
罪人達や欲にかられた者達の末路である。
魂の清んだ輝きはどこにも見当たらず、ただ、どすぐろい魂となって、冥界への渦へと吸い込まれているところであった。
この戦乱の世、闇の者達によって、たくさんの人々が殺戮の中におかれたおかげで、普通では考えられないような数の魂が冥界へと向っていた。
その渦に向って流れるように吸い寄せられるどすぐろい魂達からは少し離れた場所に、漂う者がいた。
それはそれは小さな小鳥であった。
ぐったりと、漂っている。
小鳥「・・・・」
まだ、小鳥は流される魂の流れには加わっていない。
だが、時間の問題であった。
少しづつではあったが、流れに近づいていっていた。
小鳥「・・・・・(ここは?)」
小鳥は意識を戻したようであった。
小鳥「・・・(・・どうやら、あの世のようだな・・私もどうやら・・・来てしまったのか・・・まぁ良い・・・・・・)」
小鳥は静かに目を閉じている。
そして、流れに向って吸いよせられている。
そのとき、一つの声が小鳥に話しかけたのであった。
謎の声「生きたいか?・・・・それとも、そのまま逝きたいか?・・・・」
謎の声は小鳥には誘惑してくる悪魔の囁きに聞こえた。
小鳥は耳をかさないで、そのまま流れに吸いよせられていた。
だが、再び声は聞こえてきた。
謎の声「生きれるのだが・・・そのまま、逝っても良いのかな?・・・」
小鳥はビクッと反応した。
小鳥「生きれる?・・・・・どういう事だ?・・・・・」
その声は、まんまと罠にひっかかったとばかりに小鳥に話しかけた。
謎の声「生きれるとも・・・こちら側へ来る気があれば・・・・・・・生きれるとも・・・」
謎の声の誘惑は続く。
小鳥はその誘惑が気になり始めていた。
小鳥「・・・まだ、生きれるのか?・・・・だが・・・・・」
謎の声「心配は無い・・・軽く身を委ねるだけだ・・・・それだけだ・・・」
謎の声は必要に誘惑してきた。
小鳥は少し警戒し始めた。
小鳥「・・・・消えろ・・・・」
謎の声はそのまま話し続けた。
謎の声「こちらは、・・・・お前の恨む側だ・・・・だが・・・・こちらへ来れば・・・お前の恨みも消える・・・・お前の恨んだ側を見てみたいとは思わないのか?・・・・コルトよ・・」
謎の声は小鳥の名を知っていた。
小鳥の名はコルト。
いや、コルトであった肉体を持っていたに過ぎない魂であった。
コルト「何故?・・名前を?・・・そして、貴方は誰なんだ?・・・」
謎の声は応えた。
謎の声「我は・・・・お前の憎みし・・邪神王・・・ウロボロスである・・・」
その名を聞いてコルトは愕然とした。
自らが恨み続けた邪神王であった。
だが、もう、コルトは既に死んでいる。
今更、邪神王を憎む気持ちは消えていた。
と、いうよりも、自らは邪神王に遠く及ばず敗北したのだ。
その気持ちでいっぱいであった。
コルト「その邪神王が、・・・・今更、私に何の用があるというのだ?・・・・もう、充分すぎる程に、私は汚され・・・そして・・・出会う事もなければ・・・・それ以前に敗北している。・・・・だから、こうして、冥界への穴へと流されているのだ。」
邪神王『ああ、そうだ、お前は全て終わった。だから、そうしている。』
邪神王はコルトの言う事を肯定した。
コルト「・・・ならば、・・もうほうっておいてくれ・・・・」
邪神王はそれでもコルトに話しかけた。
邪神王『・・良いのか?・・・ならば・・・・好きにすればよい・・』
邪神王の声は聞こえなくなったのであった。
コルトは目を閉じそのまま流されていく。
だが、コルトの心には迷いが生まれていた。
コルト「・・・(・・見てみたい・・・ラグナ・・・サタン・・・彼らには本当に従うべきであったのであろうか・・・・真実が知りたい・・・)」
コルトの心の迷いは一つの欲であった。
欲が膨らめば膨らむほどに、あっというまに欲は膨らんでくる。
コルト「・・・・・(・・・・・・生きたい・・・・・生きたい・・・・・・生きたい・・・・・)」
生への欲がコルトに生まれたのであった。
コルトは目を開けた。
そして、流れに飲まれないように必死に抵抗しようともがいたのであった。
だが、無情にも、コルトの魂は流れに吸い寄せられていく。
どんなにもがいても、無駄あがきでしかない。
だが、コルトは必死である。
コルト「・・・・このまま、流されてなるものか・・・・・・・どんな事であっても良い!!・・・・生きたい・・・・・・・・・生かさしてくれぇ・・・・・!!!!」
長く沈黙していた邪神王の声が再び聞こえてきた。
邪神王『・・・叶えてやろう、我が下僕となるか?・・』
コルトは必死であった。
コルト「・・・ああ、良かろう、好きにするが良い、・・・お前の為になんでもしてやる、・・・だから、助けてくれ・・」
それから、しばらく邪神王の声は聞こえなくなった。
それが、コルトにとって見捨てられたと解釈したのであった。
心の底から、コルトは発狂した。
コルト「・・・・くぅーーーーーーーーーそぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そのときであった。
邪神王『その望み叶えてやる。』
コルトの魂に力がみなぎり始めたのであった。
それは、生への活力ではなかった。
大きく、ゆっくりじんわりと、巨大な闇、コルトにみなぎってきたのは闇であった。
そして、自らの魂から、波動が伝わる。
そして、魂の中に心臓が再生されていく。
心臓は鼓動しはじめた。
ドックン!
ドックン!
ドックン!
その心臓以外にも内臓、脳、眼球、骨格、と徐々に再生されていった。
そして、しばらくすると、そこには一人の男が空間に漂っていた。
真っ赤に燃えるような深紅の大きな翼。
皮膚は以前と変わらぬ色をしている。
顔もコルトであった。
しかし、違っていた。
艶のある綺麗な肌、どうみても若い頃のコルトである。
そして、更に違う所といえば、目の色、髪の色であった。
真っ黒に奥には闇の広がる目。
そして、髪の色は赤い。
まるで、血の色であった。
闇色の目、血色の髪、真っ赤に燃え滾るが如し深紅の大きな翼。
綺麗な肌、綺麗な容姿。
闇の貴公子の誕生であった。
コルトは自らの身体を見る。
コルト「こっこれが、これが私なのか・・・・なんてことだ・・・・・・・・」
コルトは驚愕していた。
みなぎる力、誰にも負ける気がしない。
コルト「ふはははははははは・・・・・・すっ・・・・・・・・・・・・すばらしぃ・・・すばらしぃぞぉっ!!!!」
コルトは己の強さ、若さ、に自負した。
それはまさに、歓喜の雄叫びとも思えた。
そして、コルトは何故か、次に何処へ向えばよいのかわかっていた。
これも邪神王が与えた身体に記憶された事なのかもしれない、しかし、何も迷う事はなかった。
コルトはその場所へ瞬時に向ったのであった。
導かれるままに。
そこは、地下の闇の神殿であった。
コルトは沈黙しながら、祭壇のそばへと着いていた。
そして、コルトの第一声が発せられた。
コルト「邪神王様、ありがとうございます、私は何をすればよろしいでしょうか?」
コルトの声の後に、祭壇の上の空域がよどみ始めた、そして、そこから声がしたのであった。
邪神王『・・コルトよ、よくぞ参った、・・・』
コルトはひれ伏した。
コルト「邪神王様の望むがままに、なんでもやってまいりましょう、この命は貴方によって救われた、だから恩義に応えます。」
再び邪神王の声がよどみより聞こえてきた。
邪神王『コルトよ・・そう硬くかしこまる必要は無い・・・・お前の自由にすれば良い・・』
コルトはその言葉に、邪神王の偉大さを感じたのであった。
何故、今まで、この御方を憎んでいたのか、このような御方は他にはいない、なんと寛大なる方なのだと。
そして、コルトは言った。
コルト「はは、ですが、邪神王様、貴方様の直属の方達をさしおいて、大それた事はできません、せめて、誰かの力になれればと?」
邪神王の声が再び聞こえてきた。
邪神王『そうか、ならば、地上には魔帝達が先にいている。その者達の誰かの元で仕えるが良い、だがしかし、誰に仕えるのかは己の目で確かめてから決めるのだぞ。そして、お前には魔帝の次という意味で、魔皇の位を与える。』
そして、よどみは消えていき、邪神王の気配もその場から消えたのであった。
コルトは立ち上がると、スッと姿を消した。
そして、コルトは地上の上空へと出ていた。
コルトは大きな力を複数感じたのであった。
コルト「・・・(これが魔帝なのか、まずはこちらへ行ってみよう・・)」
コルトは大きく翼をはばたかせると、物凄いスピードで空を滑空して飛んだ。
早い、物凄く早い、あっという間に大きな暗い闇につつまれた森へと到着していた。
コルト「・・・(このような所にも魔帝がいたのか・・・)」
そして、コルトは闇に覆われた森の中央にある塔の方向へと飛んでいった。
稲光のとどろく中でそびえたつ塔、稲妻が大きく塔の壁をつたう。
その塔の上層階あたりの一つの大広間に腰をかける者がいた。
魔狼王ゼラヒムであった。
何をする訳でも無く、彼はただ椅子に腰をかけている。
ゼラヒムは沈黙していた。
声「あなたが魔帝ですか。」
突然、ゼラヒムの背後から声がした。
ゼラヒムは驚いた。
気配を一切感じなかったのである。
ゼラヒムほどの者に気配を感じさせない男が後ろにいた。
ゼラヒム「・・・・お前は?・・・何者だ?」
それはコルトであった。
コルト「ふん・・・ふふん・・(笑)・・・」
コルトは鼻で笑っていた、自分の力がこれほど強いとは自身では思ってもいなかったからであった。
そして、コルトの口が動いた。
コルト「私は、魔皇のコルトであります。ほんの、挨拶に伺っただけであります。」
コルトはそう言うと、その場からスッと姿を消していた。
その後に残されたゼラヒムは驚きをこえて、一瞬、死を覚悟していたのであった。
ゼラヒム「・・・・あの男・・・我よりも・・・・・力が上だ・・・・」
一方、コルトは、今度は、大きな城の上空にきていた。
コルト「ここは清い結界がはられている。」
妖狐帝九尾の潜むヤマト神国の桜花城であった。
コルト「ここは見る必要も無い・・やはり、あの地へむかおう。」
コルトは空を大きく滑空しながら飛んだ。
早い、物凄いスピードである。
あっという間に、禍々しい城のそばに着いていた。
城の上の階には広いベランダが広がっている。
その奥には大広間が見えていた。
そして、奥にある玉座らしき場所には一人の男が寝ていた。
コルトはフワッっとベランダに着地するとゆっくりと、その玉座のほうへと歩いていった。
徐々に玉座へと近づいていった。
そして、しばらく歩いて、ようやく玉座のそばについて、コルトは立ち止まった。
そこには、一人の男が寝ていたはずであった。
男はおきていた。
その男は神に仕えし者であった。
神に仕えし者「なんのようだ?・・ずっと見ていたぞ。」
コルトの気配などとっくに気付かれていた。
コルト「貴方も魔帝ですね。」
神に仕えし者の口が動いた。
神に仕えし者「それはくだらぬ事だ、お前は?」
神に仕えし者は逆に問うたのであった。
コルト「私は魔皇のコルトでございます、貴方に仕える為に参りました。」
コルトの口からはゼラヒムのときとはまったく態度が違う言葉がでていた。
コルトは悟ったのであった。
この方はなんとなく、境遇が似ていると。
そして、力の格差も圧倒的であると。
瞬時に全てを悟っていた。
神に仕えし者は、特に拒む理由も無かった。
神に仕えし者「好きにしろ、だが、何も貴様を頼る事は無い、自由にすればいい。・・・・それから、宝庫に武具がある、勝手に使え。・・・・・・・・・・」
神に仕えし者は再び寝息をたてていた。
コルト「ありがたきお言葉でございます。」
コルトは深く頭を下げ礼をすると、すぐにその場から離れた。
そして、コルトは神に仕えし者に言われるがままに宝庫へ行くと、その中に置かれていた黒い鎧と、妖しく青光を放つ細い綺麗な剣にまるで魂を寄せられるように手にしていた。
それらを身に着けたのであった。
そうです、コルトは今まで全裸でした(笑)
それから、コルトは外へ出ると、再び大空へと飛翔したのであった。
コルト「・・・・(あそこへも恩義が少しあるので、礼くらいしに行こう・・・)」
コルトは何処へとも無く大空の彼方へと消えていった。