作:邪神王ウロボロス
クルトは再び暗黒魔界、最下層まで戻ってきていた。
闇の者となったクルトではあったが、唯一愛した女性を自らの手により殺した事が大きく深い傷として心に刻まれていた。
そこは、大きな聖堂と言うべきであろうか。
魔界にある建物であるが、神を讃える建造物であった。
その中で一人の男がひざまずいていた。
謎の声『新魔帝はどうだ?ゼラヒム。』
ゼラヒム、それはひざまずく男の名前であった。
この男は魔帝の一人、魔狼王ことゼラヒムであった。
ゼラヒム「はい邪神王様、クルト殿はまだ人間を捨てきれておりませぬな。」
謎の声は邪神王である。
だが邪神王の姿は何処にも無い。
邪神王は滅多な事では姿を見せないのである。
それがたとえ、直属の魔帝であろうと。
邪神王『それを無くす段階として、わざとあそこへ向わせたのだ、思惑どおりとなっている。』
ゼラヒム「そうでしたか、それではクルト殿は今?」
ゼラヒムは顔を上げた。
邪神王『・・そろそろ来る頃だ。』
そのとき、ゼラヒムのいる場所へ誰かが近づいてきた。
クルトであった。
クルト「ふっ、お前もいたか狼野郎が。」
ゼラヒム「ふっいて悪かったな。」
邪神王の声が聞こえてきた。
邪神王『どうかしたのか?顔色が悪いぞ。』
クルトは声の方向へ振り向いた。
クルト「辞めにきた。」
邪神王『辞める?どうする気だ?』
クルト「魔帝を辞めにきた。」
邪神王『好きにするといい。』
ゼラヒムはクルトを見ていた。
ゼラヒム「・・・(邪神王様は何を考えておられるのか・・)」
クルトはその場を背に歩き出した。
その姿を後ろからゼラヒムは見つめる。
そして、クルトは聖堂からでていった。
邪神王『案ずるな、ゼラヒム、奴は必ず戻ってくる。そのときこそは人間世界に恐怖を与えに向おうではないか。』
ゼラヒムは軽く笑みを浮かべた。
ゼラヒム「そうですね。」
クルトは暗黒魔界の上層部の荒野に立っていた。
クルトにとって最下層より上層部まで移動する事など、雑作も無い事であった。
ヒューーーー〜〜〜〜・・・・・
生暖かい暗黒魔界の風が吹く・・
クルト「・・・(今更、人間には戻れない。)」
クルトの表情は、哀しみがこもっていた。
クルトは思う。
フィアナはもう死んだ。
自分の手にかけて殺した。
フィアナが好きだった。
フィアナのもとへも、もう戻る事ができない。
フィアナはもういないからである。
誰のせいだ?
自分のせいだ。
何故殺した?
殺すつもりはなかった。
知らない土地で、平和に暮らしていてもらいたかった。
もうかかわる事は無いと思ってた。
何故殺した?
何故だ?
何故殺してしまったのだ?
望んだ事では無いはず・・・
クルトに対して魔界の風が吹きつけるだけであった。
哀しみを背負う一人の男。
クルト「・・・」
クルトは自分の纏う赤い鎧を脱ぎ捨てた。
ズシャッ・・
そして、何処へ行くにも宛の無い事を悟る。
人間世界へも、邪神王のもとへも、今更戻る場所は無かった。
クルト「・・・(かといって、天界などにも行けまい・・・・・・・)」
クルトは目前の岩に腰をかけた。
クルト「・・・(あそこへ行ってみようか・・)」
だが、クルトには両手が無い、何処へ行こうと不自然である。
クルト「・・・(腕をつけよう。)」
ここは魔界である、いくらでも魔物達が徘徊している。
クルト「・・・(とりあえずは、あいつの腕でよいか。)」
バシュ!!
クルトは近くにいた魔物から腕を奪い、そして自らの腕としてつないだ。
クルトが力をこめると、みるみる身体に馴染んでいき、クルトの身体と同化していった。
本来の魔物の腕の容姿は消えていた。
クルト「・・・(まぁ、応急だが、これでいい。)」
そして、クルトの姿はその場からスッと消えたのであった。
クルトは別の世界に立っていた。
暗黒魔界とは一転してまったく逆とも言える場所へ。
そこの空は光に包まれている。
綺麗な空。
清んだ空気。
黄金に輝く草原。
不思議な果実が実る樹木。
さきほどとはうって代わって別世界である。
クルトは歩いた。
始めて踏み入れた世界。
人間の地上世界では考えられないような光景である。
美しい。
しばらく歩いていると、小さな泉が現れた。
そこには常に新しい水が湧きでている。
清んだ泉、見ているだけで心も清く洗われそうに感じさせられてします。
クルトはその泉の片隅に腰を下ろした。
クルト「・・・(俺はいったい・・)」
しばらくボーっと座っていたが、クルトは横たわった。
そして、静かに目をつぶり、湧き水の水面が揺れる音を静寂の中で耳にしながら、眠りについたのであった。
クルトは夢を見ていた。
平和の夢。
そこにはクルトの両親、ジョセフとメイアの姿があった。
ジョセフはパイプをくわえている。
メイアも幸せそうな顔をしてクルトを微笑みながら見ている。
メイア「クルト、お嫁さんが待っているわよ。」
ジョセフ「早く行こう、皆待ってるぞ。」
クルトは白い正装を着ていた。
クルトは両親に連れられて、何処かへ向わされた。
そこは真っ白い教会である。
カ〜〜〜〜ンカ〜〜〜〜〜ンカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン
鐘の音がしている。
教会の入り口に一人の女性がウエディングドレスを着て立っていた。
とても綺麗だ。
ジョセフ「さぁ、行くんだ。」
クルトはその女性のそばへ行った。
女性はフィアナだった。
嬉しそうな顔をしている。
フィアナ「クルトぉ♪私幸せよぉ♪」
そして、クルトはフィアナの手を握ろうとした。
手が握れない・・・
だんだんと、フィアナが遠ざかっていく・・・
ジョセフもメイアも遠ざかっていく・・・
教会の空は赤く燃え・・
空が壊れていく・・・
教会も消えていく・・・
そこで夢は終わったのであった。
クルトは現実に戻るのが怖かった。
なので、眠りから覚めていたが、しばらく目を閉じたままでいた。
だが、泉のせせらぎの音を耳にしながら、ゆっくりと目をあけはじめたのであった。
クルト「・・・・ワッ!!」
謎「キャッ!」
寝ていたクルトの顔を覗き込む顔があった。
クルトは驚いて声を上げてしまった。
その顔の正体は女性であった。
クルト「・・・・・」
女性「ごっごめんなさい・・おこすつもりじゃなかったのよ・・」
女性は謝り続けている。
クルトはそれよりも女性を見て驚いていた。
似ている、瓜二つと言ってよい程にそっくりなのである。
フィアナがそこにいているように思える程であった。
フィアナ似の女性「ほんっとうにごめんなさいですぅ・・・この世界では見かけない格好ですので、つっ・・つい見とれてしまって・・・ごめんなさい・・」
相当悪気は無かったようだ。
魔帝であった頃のクルトならば殺している。
だが、クルトはもう、魔帝ではない、一人の男であった。
クルト「・・いや、いいんだ、ちょうどおきるとこだった。」
フィアナ似の女性はクルトの顔を今度は心配そうな顔でうかがった。
フィアナ似の女性「あの、ごめんなさい、聞いても怒らないでくださいね、おせっかいかもしれませんが、泣いてらしたので、何か悲しい夢でも見ていたのではと?」
クルト「・・・(涙?・・枯れてたはず?・・)」
クルトは手で目元を触ってみた。
かすかに涙がでていたのだ。
クルト「これは・・涙・・俺にもまだでたのか・・」
フィアナ似の女性「クスクスクス・・涙くらい誰にもありますよ(笑」
フィアナ似の女性の笑顔でクルトの心は晴れていた。
クルト「ところで、ここは何処ですか?」
ふと、我にかえって、クルトはここの場所が何処なのか訪ねたのであった。
フィアナ似の女性「やっぱり貴方は、ここの者ではないのね、ここは神々の住まう楽園と言われる神界ですのよ。」
クルト「・・神界・・正反対すぎたか・・まぁいいか。(笑」
クルトは笑顔を見せていた。
クルト「ところで、君の名前は?俺はクルト。」
フィアナ似の女性はクルトの笑顔を見て嬉しそうだ。
フィアナ似の女性「私の名前はフィーディア、一応、まだまだかけだしですが愛の女神です。あっフィアって呼んでいただいてもかまいませんよ。」
神界、愛の女神フィーディア、クルトとはまったく似合わない光景である。
クルト「んじゃぁ、フィア、俺の事もクルトと呼び捨てでいいよ。」
クルトには彼女とフィアナがだぶって見えた。
人間世界では無いが、平和である。
フィア「あの、クルト・・さん、お腹すいてない?????」
クルト「大丈夫だ、それより、さんはいらない。クルトでいい。」
フィアは手に何かを持っていた。
それをクルトの座っている横にそっと置いた。
フィア「それ、お腹すいたら食べてね、友達にあげようと私が作ったのだけど、クルトにあげる。」
それは、変わった形をしたというより、不自然な、なんとも異形異質な、超まずそうなクッキーであった。
おそらくは、初めて焼いたのであろう。
クルトはそれを見つめて、絶句した。
クルト「ん?・・・・・・・(本当に女神なのか・・・・)」
クルトはフィアの親切にしようとしている気持ちがわかった。
クルト「・・・・・・・ありがとう。(ボソッ」
クルトは小声で礼を言った。
クルトが礼を言うのは数十年ぶりであった。
フィア「あっ私、そろそろ行かなくちゃ、クルトは明日もここへ来ますか?」
クルト「ああ、特に行く宛が無いから、しばらくここにいる。ここに小屋でも作る。」
クルトは笑顔であった。
新しい生活が始まったからであった。
フィア「あの、じゃぁ、明日も来てもいいですか????????」
クルト「ああ、どうぞ。」
フィアはほっとした表情であった。
フィア「駄目って言われたらどうしようと思いました・・それじゃぁまた来ますねぇ♪」
フィアは最後にニコッと笑顔を見せて帰っていった。
クルトはそれを見送ると、完全にいない事を確認した。
そして、軽く念を込めた。
泉のほとりに小さな小屋が一瞬で建てられていた。
クルトはまずそうなフィアのクッキーを口にほうばった。
クルト「うっ・・・・・・・(苦い・・・・・・しかも酸味まで・・・)」
クルトは薬と自分に言い聞かせながら食べたのであった。
それから数日経過した。
フィアは毎日来るようになっていた。
そして、今日もまたフィアが来た。
フィア「クルト♪♪♪」
クルトは椅子に座っている。
クルトは笑顔でフィアに応える。
クルト「よっ♪」
いつのまにか、二人は仲良しになっていた。
フィア「今日はとっておきの料理を持ってきたわよぉ♪」
クルトはビクッとした。
だが笑顔で応えるしかなかった。
クルト「あっああ、ありがとう(笑」
フィアの手料理は最高にまずいのだ。
味見しているのか?それとも、味覚がおかしいのか?と思う料理であった。
クルトは聞いてみた。
クルト「フィア、ところで、料理は毎日自分のも作っているのか?」
フィアは笑顔で応えた。
フィア「はい♪、自分の食べるのは自分で作りますよ、だって、他の方が作った物は何故か物凄くまずいのですよぉ♪」
クルトは理解した。
謎はとけた、フィアは物凄く味覚がおかしいのであった。
フィア「自分で作るのが一番美味しいですぅ♪(笑顔」
クルト「そ・・そか・・はは(苦笑」
クルトは自分の心に薬と言い聞かせて食べたのであった。
フィアはジィーーっと、クルトの顔を見つめている。
フィア「美味しい?♪(ニコ」
フィアはニコッと笑顔で問いかける。
クルトは悟られては駄目だとこらえながら応えた。
クルト「うん、おいしい♪はは・・(笑顔?」
何処から見ても、この二人は恋人同士に見えた。
クルトはごまかさなければと会話を繰り出す。
いつも、そうしていた。
クルト「ところでフィアは一人っ子なのか?」
その問いにフィアは応える。
フィア「私には、お姉さんが一人いてますよ、でも、家出しちゃって、何処にいったのかわからないです。名前はクラゥディアっていいます。」
クルトはふと、何処かで聞いた事があるように思った。
クルト「へぇ、その姉さんとは仲良かったのか?」
フィア「はい、姉さまはとても優しかったです、私は姉さまが大好きでした。」
クルト「早く帰ってくるといいな、フィアの姉さんだ、きっと美人なんだろうな(笑顔」
フィアはその言葉に少しムッとする。
フィア「帰ってきても紹介しませんわよ♪(笑顔」
クルトは首をかしげた。
フィア「姉さまにクルトを取られるのが嫌だから(笑顔」
クルト「取るとか取らないとかって・・・(苦笑(やれやれ・・)」
クルトは姉さんの事をもっと聞いてみた。
クルト「フィアの姉さんとはどんな女神様だったんだ?」
フィア「そうねぇ、男好きで、男に弱く、時には気が強くて、それから、雷鳴の女神です。私には凄く優しいですよぉ♪(笑顔」
クルトは過去の記憶を思い出した。
クラゥディア、何処かで聞いた名だ。
たしか、魔帝の雷姫もクラゥディアという名前であった。
雷鳴の女神、雷姫、重なる。
クルトは聞いてみた。
クルト「お姉さんは神界にいるのか?」
フィアは少し悲しげな顔をした。
フィア「実は、家出といっても、この神界からも出て行ったようです、そして、今はどこにいるのかはわかりませんが、悪い噂を聞いた事があります。」
クルト「悪い噂?」
クルトは気になった。
フィア「はい、・・・何処かの魔界に行ったという噂を聞いてます・・」
クルトは思った。
雷姫クラゥディアこそが、フィアの姉さんであり、雷鳴の女神クラゥディアであると。
雷姫の過去など、どうでもよいが、まさかその妹と出会っていたとは思ってもいなかった。
クルト「大丈夫、きっと、いつか戻ってくる(笑顔(あの淫乱女の妹だったのか。妹のが全然良いじゃねぇか。)」
フィアはクルトの言葉で笑顔に戻った。
フィア「そうよね♪(笑顔」
そして、数時間、フィアはクルトのそばにいた。
フィアはクルトをよっぽど気にいっている。
フィア「それじゃ、また、明日来るわねぇ♪(笑顔」
クルト「じゃあな(笑顔」
そして、いつものように帰っていった。
クルト「(こういう生活も悪くは無いな。)」
そのときであった。
クルトは察知していた。
クルト「でてこい。」
闇の力を感じていた。
樹木の木陰から一人の男が現れたのである。
男「このような所で何をしてるのかと思えば、雷姫様の妹君とそのような関係で。」
クルトは真剣な表情をしている。
クルト「狼野郎の雑兵が、何故ここに来た?フェンリル。ここはお前たちのような薄汚れた者が来るような場所じゃないぞ?」
男の正体は魔帝の魔狼王ゼラヒムの配下である108の魔狼星の孤狼フェンリルであった。
フェンリル「いえいえ、少し様子を見に来ただけですよ、それではまた来ます。」
フェンリルはそう言うとスッと姿を消した。
クルト「監視にでも来たようだな。物好きの狼野郎が。雑魚をよこしやがって。」
クルトは小屋の中へ入っていった。
更に数日経過していた。
フィアは自分の部屋にいた。
とくに変わった事もなく、今日もクルトの所へ行く準備をしていた。
フィア「♪〜〜」
そこへ一人の女性が入ってきた。
女性「あら、フィアったら、また出かけるのですね?最近毎日楽しそうに何処へ行ってるのかしら。(笑顔」
フィアはそれに笑顔で応える。
フィア「お母様、それは内緒ですわ♪(笑顔」
母親であった。
母「まぁ、好きな方でもできたのですか?(笑顔」
母も当然女神である、鋭い所を突いてくる。
フィア「内緒ですわぁ♪(笑顔」
母「クラゥがいなくなって、貴方も元気を無くして、心配していたけど、これで安心だわね(笑顔」
フィア「それでは、行ってまいりますねぇ♪(笑顔」
母は笑顔で見送る。
母「今度、おうちに連れてきなさいねぇ(笑顔」
人間界と同じく、神界でも、平和な家族は変わりなかった。
フィアは楽しそうに嬉しそうな顔でクルトのもとへと向ったのであった。
遠くのほうからそれをうかがう男がいた。
それはフェンリルであった。
フェンリル「クルトさん、このような光景は貴方には似合わない・・本当に魔帝だった事が疑わしく思えますねぇ・・」
フェンリルはそうつぶやくとスッと姿を消したのであった。
そして、フィアはまた今日もクルトのもとへやってきた。
クルトは椅子に座って泉を眺めていた。
フィアはそーーーーっと、クルトの背後からしのびよって、目隠ししてから「だぁれだ?」と言おうと思った。
フィアはそーーーーーと、近づいていく。
クルトは泉を見つめている。
フィアはさらにそーーーーーーーーーーーーっと。
そーーーーーーーーーっと。
そして、さぁ真後ろに到着。
目隠しをしようとした、そのときであった。
クルト「ばれてるぞ(笑」
クルトはクルッと身体を向けたのであった。
フィア「あ・・(汗」
そして、今日も楽しい時間が過ぎていったのであった。
クルトもフィアを好きになりつつあった。
二人はもう、恋人同士という関係は何も言うまでもなく成立しているようであった。
フィア「ねぇクルト、今度ねぇお母様からおうちへ連れておいでと言われたのよぉ♪」
クルトは快くOKした。
クルト「お母さんかぁ、楽しみだなぁ、きっと、フィアの母さんだから、美人だなぁ♪(笑顔」
フィアは一瞬ムッっとした。
フィア「やっぱり連れていきません!」
クルト「あっいや、そんなつもりは無い、フィアが一番美人で綺麗だ。(汗」
フィアは機嫌を取り戻した。
フィア「本当?それじゃぁ今度連れていってあげますねぇ♪(笑顔」
フィアは嬉しそうであった。
そして、日も暮れてきた。
フィア「そろそろ帰らなきゃ、また明日来ますわね♪それとも、寂しい?」
フィアはクルトに甘い言葉を送る。
クルト「いや、べつに(笑顔」
フィア「クルトのいじわるぅ♪寂しいくせにぃ♪また明日来ますわねぇ♪(笑顔」
そして、そのような会話も終わり、フィアは帰っていった。
クルトはもう、ここでずっと暮らそうと決めていた。
そして、ここにはフィアがいる。
フィアが誰の妹であろうが関係無い、フィアさえおれば幸福だと感じた。
クルトは何もかもを忘れて幸せになれると思った。
この、神界で、フィアとともに幸せに暮らすと決意したのであった。
だが、それを快く思わない者がいた。
フィアは自分の家に帰る道中である。
クルトに明日も会いに行こうという気持ち一杯で笑顔で帰るフィアの前にその者が現れたのであった。
フェンリルである。
フェンリル「お嬢さん、少しお待ちください。」
フィアも女神のはしくれである、その異様な魔力を察知していた。
フィアにはクルトからも魔力を感じていたが、クルトなので、気にはとめなかったのである。
フィア「貴方は何者ですか?この世界の者ではありませんね?」
フィアは警戒している。
フェンリルは軽く微笑んでいた。
フェンリル「自己紹介しましょう。私は暗黒魔界の邪神王様直属配下の魔帝は魔狼王ゼラヒム様配下の108の魔狼星の孤狼フェンリルと申します。」
フェンリルは深々と礼をした。
フィアは緊張している。
フィア「そのような闇の者が私に何の用があるというのですか?」
フェンリルは応えた。
フェンリル「それが大ありなのですよ、クルトさんをご存知ですよね?」
フィアはビクッとした。
フィア「クルトの事を知っているのですか?」
フェンリルはニヤリとした。
フェンリル「知っていますとも、あのお方は魔帝ですからねぇ(笑」
フィアはそれを聞いて驚愕していた。
ここは神界である。
そして、フィアは女神である。
邪神王、そして、魔帝、その存在は知らぬはずもなかったのだ。
魔帝の恐ろしさ、強大さも知っていた。
フィア「そっそんな、クルトがそんな・・・でもクルトはクルトなのですよ・・・たとえ、クルトがなんであろうと、今のクルト、それが私の知るクルトの全てなのよ・・貴方は魔界にでも早く帰ってください。」
フィアは泣きそうな顔をしている。
フェンリル「それと、もう一つ、言っておきたい事があります。」
フィアはもう何も聞きたくないという表情をしていた。
フェンリル「貴方のお姉さんの居場所も知っていますよ(笑」
さすがにフィアは反応した。
フィア「えっお姉さまを知っておられるのですか?」
フェンリル「ええ、知っていますよ、貴方のお姉さまはですね。(笑」
フィアは知りたかった。
フィア「何処にいるのですか?」
フェンリル「魔帝の雷姫クラゥディア様ですからねぇ(笑」
フィアは硬直している。
あまりにもショックであった。
クルトが魔帝であり、そして、姉が魔帝である事、ショックである。
フェンリル「でわ、また会いましょう。」
フェンリルの姿はその場からスッと消えた。
フィアはショックでいっぱいである。
フィアにとって好意をよせている相手が魔帝であり、大好きであった姉もまた魔帝である衝撃の事実をどう受け入れたらよいものかと、もうどう考えてよいものかわからなくなっていた。
フィアはとりあえず、家へと帰っていった。
それから数日経過していた。
クルトはあいかわらず椅子に座り、泉を眺めていた。
だが、少し元気が無いようだ。
クルト「・・・・(フィア、今日も来ない・・・・)」
フィアが突然、クルトの所へ遊びに来なくなっていた。
あれほど毎日来ていたので、クルトは気になっていた。
クルト「・・・・(明日も来ると言っていたのに、どうしたというんだ・・・・・)」
その頃、フィアはかなり悩んではいたが、一つの決意をしていた。
フィアは自分の部屋にいた。
フィア「・・(決めた。行こう。)」
フィアは椅子から腰を上げ、そのまま部屋から出て行った。
そこには母がいた。
母「フィア?どうしたの?」
フィア「お母様。」
フィアは母の顔をジッと見つめた。
母は優しく微笑みながら言った。
母「そうね、何があったのかはわかりませんが、行ってらっしゃい。(笑顔」
そして、フィアは家から出て行ったのであった。
クルトは、椅子に座っている。
クルトのもとへ誰かがきた。
クルト「・・フィア?・・」
いや、フィアではなかった。
フェンリル「こんにちわ、クルト様、フィアさんは来ませんよ(ニヤリ」
フェンリルの様子に、クルトは彼がフィアに何かしたと気付いた。
クルト「お前・・フィアに何をした・・」
クルトは怒りがこみ上げてきていた。
辺りに風が吹く。
ミシミシと力が伝わりはじめていた。
クルト「・・このゴミが・・場合によっては、・・・殺す・・」
クルトはかなり怒ってきている。
あたりの美しい空が波動で震えていた。
そして、一転して空色が暗くなってくる。
フェンリル「ほぉ・・場合によって・・殺せますかね?・・貴方ごときに(ニヤリ」
フェンリルはまるで、クルトには自分を殺す事など不可能な言い方であった。
クルトの目が赤く光っている。
フェンリル「彼女に、貴方の正体と、姉の詳細を全部話しただけですよ。(ニヤリ」
クルトはそれを聞いて、ギョッっとしていた。
それはそのはず。
フィアが来なくなるのも当然だと思えたのだ。
クルト「お前・・・・・・俺の全てを・・・・壊し・・・・く・・殺す!・・」
クルトの怒りが頂点に達したのであった。
空は赤く変色して、豪風が吹き乱れ、木々は激しく揺れ動く・・
クルトからは凄まじい闇の波動が噴出している。
もう、クルトを止める事は誰にもできない状況である。
だが、フェンリルはまったく、平然な態度をとっていた。
フェンリル「・・ふふ・・これが、貴方の本気ですか?・・やはり、さすがは魔帝、ゼラヒム様を軽く越えておりますね。(ニヤリ」
どう考えてもおかしい、フェンリルは自らの主君よりも力が越えているクルトを怒らせて平然としている。
そして、それを自らも認めている。
クルト「・・・・ゴミ・・・」
クルトからは闇の魔力がオーラのように吹き出ている。
フェンリル「最初に言っておきましょう、私は己より強い者に従えた事など、今まで、一度として、無い、そして、今後も無い。」
フェンリルの言っている事がクルトにはよくわからない。
フェンリル「そこまで、本気になっていただいた事に対して敬意を払って、真実を述べましょう。」
クルトはそれを聞きながらも怒りの頂点であった。
クルト「・・・ゴミ・・・」
もはや、クルトには目の前のフェンリルを消滅させてもおかしくないほどの怒りがこみ上げていた。
だが、フェンリルはクルトの闇の波動も、魔力も心地よいそよ風程度にしか感じていなかった。
涼しげな表情の中に冷酷さが伝わってきている。
クルトは聞き耳をたてず、とうとう動いた。
クルトは軽く詠唱、そして、その次には辺りには地獄の灼熱が広がっていた。
フェンリルはまったく涼しげである。
フェンリル「せっかく、話してあげようと思いましたのに、聞き分けのない・・・・・・・・・・・・・ゴォミィはぁ貴様だぁ〜っ!!!!!」
フェンリルの目つきが変わった。
恐ろしい形相である。
目は凍てついている。
その身体からはクルトを越える波動が噴出してきている。
その波動同士の衝突により、空気は歪んで見える。
今にも、次元が崩壊しそうな勢いである。
クルトは怒りの中で察知した。
こいつは只者では無い。
それを遠くから見つめる者がいた。
フィアであった。
フィア「あれは?・・クルトのいるあたり?・・いったい何がおきているの?」
フィアは急いだ。
両者の激突する波動の風圧がフィアを襲う。
フィア「・・うっ・・」
だがフィアは負けじと、その場に必死に向っていた。
そして、なんとか状況を確認できる位置まで辿り着いたのであった。
フィア「・・あれは?クルト?、そして、あの方はこの前の。」
両者の激突を目前に垣間見ていた。
フィアはどうすればよいのかわからない。
今まで見た事の無いクルトの表情と、その威圧感である。
フェンリルの放つ威圧感も同格である、いや、それ以上かもしれない。
これが、邪神王の魔帝というものなのかとフィアは初めて実感させられたのであった。
だが、フィア自身も女神である、ここは黙って見ているわけにもいかない。
ましてや、クルトの事が気がかりである。
フィア「なんとかしなければ・・・」
そういう事など知るよしもなく、両者は激突していた。
フェンリルが軽く詠唱・・
クルトも軽く詠唱・・
フェンリルはクルトが詠唱を始めた瞬間に詠唱を止め、向っていった。
向かいながらも徐々に巨大な魔狼の姿になっていた。
クルトの詠唱が止む前に、フェンリルの爪がクルトを襲ったのであった。
ドンッ!!
クルトは吹っ飛んでいく。
詠唱途中のクルトの魔法が失敗して見事にクルト自身に向けられた!!
クルトはフェンリルの巨大な爪にひっかき飛ばされたおかげで、今までいかなる魔法もうけつける事のなかったクルトの腹は裂けている。
そして、裂けた部分からは鮮血が噴出している。
内臓も半分えぐられている。
フェンリルの前足の爪にはその内臓が付着していた。
クルトには自らの唱えた魔法が襲いかかった。
次元が歪む・・・そしてクルトも歪む・・全身ズタボロである・・・
クルト「・・ガハッ・・ぐ・」
フェンリル「グルルルルル・・・」
フェンリルの口からはよだれがポタリポタリとたれている。
この姿では、他の魔狼と大差無いのかと思わせられたが、そうでは無い事がすぐにわかった。
フェンリル「グルル・・私の話を聞く気になりましたか?・・グルルル・・」
魔狼星のだけのことはあった、その姿になっても喋れるのだ。
クルトは動けない・・
だが、その時であった。
何かがフェンリルの前に立ちふさがったのである。
フィア「クルトは殺させない!!私が・・この愛の女神フィーディアが全力で守ります!!」
フィアであった。
さすが、女神である。
今まで見せる事のなかったような輝きが身体からでている。
聖なる力がフィアの身体からでていた。
これが女神の力であった。
それをクルトは瀕死ながらも、かすかに開いた目から見えていた。
クルト「・・う・・フィ・・フィア・・危ない・・・」
クルトは思った。
フィアは確実に殺される。
そう、クルトは思ったのであった。
クルトは瀕死の致命傷を受けていたが、フィアを殺させてなるものかと動こうとする。
しかし、クルトの身体はもはやずたぼろであった。
動くはずもない、ただ見ているだけで精一杯であった。
フェンリルのよだれが地に落ちると、そこはジューっと腐食していった。
フェンリル「グルルル・・・ほぉ、お嬢さんですか・・グルルル」
フェンリルの目にはフィアがうつっていた。
フィアは手を広げて力の限り、フェンリルに愛の女神の力の光を向けた、だが、フェンリルには効かない。
フェンリル「グルルル・・・泣けてくる・・グルル・・実に可愛い・・・グルルルル・・」
フェンリルはフィアに突進していく。
クルト「・・やっ・・・やめろぉーーーー・・・やめてくれぇーーーーー・・・・」
クルトは動けない。
無残にもフェンリルの口にはフィアがくわえられていた。
フィアはぐったりとしている。
先ほどまでの女神の聖光は消えていた。
クルトに異変がおきていた。
クルトは切れたのであった。
ズタボロになってはいたが、クルトは浮遊していた。
そして、フェンリルの目前にいた。
フェンリル「グルルル・・・まだ、そのような力が残っていましたか・・・グルルルルル・・」
フェンリルの力はゼラヒムもクルトも余裕でこえていた。
その前に切れたクルトが立ちはだかる。
クルト「・・・・・・・・・・フィアを放せ・・」
クルトは完全に切れている。
髪は逆撫で、腸や内臓の見えている腹からは血も止まり、恐ろしい怒りの形相である。
フェンリルは口にくわえていたフィアをポイッと放り捨てた。
フィアは地面に叩きつけられて、ぐったりしている。
噛まれていたので、かなりの血もでている。
クルトはそれを見ると、更に切れ気味である。
フェンリル「グルルルル・・・・それが見たかった・・私は本当の名前はマルコシアス・・・本当ならば魔帝になっていたのだが、断って、ゼラヒム様に譲った、そして、魔狼星を一匹殺して、成り代わっていたのだ・・・グルルル・・フェンリルという名だったので、それを名乗り、偽っていた・・・そして、私の本気は今から出してあげよう・・・グルルルル・・」
フェンリルのとは偽名であった。
本当の名前はマルコシアス、実力は魔帝をより上である。
己より強い者には従わないという言葉の意味がわかったのであった。
何故、従わないのかというと、それは、強い者に媚びる気も無ければ、弱い者に仕えておれば、裏切られる心配も無い、そして、どうにでもできる。
そういう考えからであった。
マルコシアスはだんだんと人型に戻っているように思えた。
だが、違った、容姿がその前の人型のときとはだいぶ違っていたのである。
威圧感は魔狼形態を更に上回っている。
軽く腕を組んで空中に浮遊しながら立っていた。
そして、不敵に微笑む。
マルコシアス「さぁ、おいで。」
切れたクルトは力の差も読めないほどであった。
無防備に突進していく。
しかし、まじ切れのクルトでさえ、マルコシアスは赤子のように遊ぶかのように避けては、顔を軽く蹴ってみたり、軽い一撃をポンポン当てていく。
致命を受けたズタボロの身体にはその軽い衝撃も激痛となって全身を走っていた。
クルト「・・・・・・・・・なぜだ・・・・・なぜ・・」
クルトは絶望の淵にたたされたような気持ちで我に返っていた。
もう殺される、フィアも自分も殺される。
そう思っていた。
終わりだ・・・・と。
マルコシアス「ふふ・・教えてやろう・・お前との決定的な力の差とはなんなのか。」
マルコシアスは語りだした。
クルトにはもはや成すすべも無く、ただ、じっと聞くしかなかった。
クルト「この力の差?だと?・・」
マルコシアス「それは、お前自身に残る一欠けらの人間の心だ。」
マルコシアスはクルトにとどめをさそうと身構えた。
そのとき、フィアが意識を戻した。
フィア「うっう・・」
そして、クルトとマルコシアスの方向を見たのであった。
フィア「・・何もしてあげられない・・」
ただ、見ているだけしかできなかった。
クルトはマルコシアスの言葉を深く胸に刻み考えていた。
マルコシアスはクルトに向ってくる。
だが、そこでクルトが思わぬ行動に出たのである。
その行動に、マルコシアスは驚愕した。
突進していたマルコシアスは止まった。
クルトの右腕が・・
グシャ・・・・
マルコシアスは驚いている。
マルコシアス「なっ・・(こいつ、おかしくなったのか!!?)」
クルトの右腕が自らの頭を砕いていた。
右目は飛び出て、たれぶらさがっている。
そして、クルトの頭からは物凄い血があちる。
頭蓋は砕け、ピンク色の脳が外に見えていた。
そして、今度は、更なる行動にでたのであった。
自らの脳を掴んで、一部分を掴み出したのである。
見ているだけで、吐きそうな光景である。
そして、右手には掴みだした脳の一部が握られていた。
マルコシアス「・・・・・なっ何をしている・・」
クルトは手に持つ自身の脳を潰して捨てた。
すると、周囲の気質が突然変わったのである。
冷酷な気で満たされている。
情のかけらも感じる事ができない、恐怖の威圧感。
そして、クルトの致命傷の腹や砕けた頭蓋があっというまに再生していった。
クルトは沈黙している。
クルト「・・・・・・」
冷たい目である。
マルコシアスを冷たい目で見つめていた。
呼吸も正常に戻っていた。
クルトは自らの腕を見つめた。
そして、マルコシアスの腕を見つめた。
そして、初めてクルトの口が動いたのであった。
クルト「・・これに比べて良い腕だなそれは?・・」
クルトは冷たく無表情である。
マルコシアス「・・気でも狂ったか?」
クルトは右手で左腕をちぎって投げ捨てた。
そこからは血も何もでてこない。
マルコシアスはクルトの変な行動を見守っている。
フィアも遠くからそれを見ているが状況がつかめない。
クルトは軽く詠唱すると、空中が少しだけ歪み淀んだ、そこに右手を持っていくと、ヌポッっと右手が中に入っていった。
そして、腕を引き抜いていくと、そこから、一本の魔剣が出てきた。
片腕のクルト、右手には魔剣が握られている。
マルコシアス「今更、何を無駄あがきを?・・」
一瞬であった、クルトが消えた。
マルコシアスは目を疑った。
周囲を見回した。
クルトはいた。
マルコシアスの後ろに背を向けて、そして、何故か左腕があるではないか。
それと、魔剣を持っていた右手を持っているではないか。
クルトには両腕があって、先ほどの右腕を左手で持っている。
マルコシアスには理解できなかった。
マルコシアス「どうした?その腕は?」
クルトがゆっくりとマルコシアスの方向へ振り向いた。
クルト「・・良い腕だ。」
マルコシアス「何を言っている?」
クルト「・・ありがとう(ニヤリ」
クルトの微笑みにマルコシアスは寒気がゾクゾクッと走ったのである。
マルコシアス「・・・(なんだこの・・恐怖の悪寒は?・・)」
マルコシアスは肩の辺りが非常に熱い事に気付いた。
そしてゆっくりと、自らの肩を見てみた。
マルコシアス「・・・・・・・・ぐっギャーーーーーーーーーー!!!!!!」
マルコシアスの両腕が無かった、そして、見事な切れ口であり、傷口は焼けて血はでていない。
マルコシアスは大変であった。
だが、そんな事などおかまいなしに、クルトか魔剣を一閃した、マルコシアスの胴体の下半身がドサッと地面に落ちた。
マルコシアスは恐怖した。
そして、マルコシアスは地面に落ちていく。
マルコシアスは叫んだ。
マルコシアス「お、お前はクルトなのかーーっ?だっ誰なんだぁーーーーー!!」
クルトはそれを聞いて言った。
クルト「クルト?・・誰だそれは?・・・名など覚えてない、俺はただ、神に仕えし者だ。それだけだ・・」
マルコシアスは逃げた。
スッとその場からテレポートして逃げていった。
フィアは戦闘が終わった事を確認していた。
フィア「クルト・・勝ったのね・・もう、貴方が例え、闇の者でも、私は付いて行きます・・」
フィアは誓っていた。
戦闘を終えたクルトはしばらく宙で浮いていたが、フィアの姿を確認したので、フィアのもとまで来たのであった。
フィアはクルトが来てくれた事が嬉しかった。
そして、フィアもぼろぼろではあったが、なんとか立ち上がって、クルトに抱きつこうとした。
だが、何かが違った。
フィア「あれ?・・・」
フィアは自分の身体を見る。
そこからは血が噴出している。
だが、理解するのに時間がかかった。
フィアの胸にはクルトの持っていた、魔剣がグサリと貫通して刺さっていた。
フィア「・・・・どっどうして?・・・」
フィアの目からは大量の涙がこぼれ落ちている。
クルトは冷酷な冷たい視線で見つめている。
フィアは魔剣の柄を握るクルトの手に自分の手を持っていき、握った。
もう、フィアの胸から、そして、背中に突き出た刀身からは、フィアの鮮血が噴出するかのように吹き出ている。
フィアの意識は遠のいていく・・・・・
フィア「クルト・・・・私は・・・・貴方が・・・・・・好きだった・・・・・」
そして意識が遠のいていこうとした寸前に、クルトの口が動いた。
呪文のようであった。
呪文とともにフィアとフィアに突き刺さった魔剣がスッと姿を消したのであった。
もう、この男は、クルトではない、冷酷非情の神に仕えし者であった。
神に仕えし者は暗黒魔界へ戻っていった。
それから数年後、地上は人間世界にて、第一次暗黒魔大戦と呼ばれた長い戦いが始まったのであった。
そして、それから2万年後、再び、地上に神に仕えし者達、魔帝が地上に現れたのであった。
=四魔帝外伝=《神に仕えし者の章・始まりの序曲》 完