作:みゃあ♪さん
「すいません、1泊部屋を貸していただけないでしょうか」
アリアが奥に向かって呼びかけると、宿屋の主人と思われる人物が奥から出てきた。
「おや、旅人かい?めずらしいね」
主人は一瞬驚いたような表情をするが、すぐにニコニコと話しかけてきた。
「部屋なら空いてるよ。好きに使ってくれ。どうせ客も来ないんだから」
「感謝します」アリアはそう言うとルームキーを2つ受け取り、外で待っていたラグーン達を中に呼び入れた。アリアの家で服装を整えてきたので、ラグーンとニルスを元盗賊だと疑う者は誰もいない。みゃあ♪の耳と尻尾も巧妙に隠されている。4人が2階に上がると宿屋の女将と出くわした。
「あらまあ、こんなに人が来たのは久しぶりねえ。昔は月光蟲目当てで沢山人が来てたんだけどねえ」
「月光蟲ですか」
「ええ、月の光に照らし出されて月光蟲が一斉に光りだした瞬間はとても幻想的で、おもわず見入ってしまうのよ。あなた達も一度見てみるといいわ」
女将さんはそれだけ言うと下に降りて行った。
「こんな時じゃなかったら一度見てみたいものだね。部屋は僕とラグーンとニルスはここ。みゃあ♪は向かい側でいいね?」
アリアはそう言うとみゃあ♪に鍵を渡しラグーン達と共に部屋に入っていった。
「う・・・・・ん・・」
夜、ラグーンはふと目を覚ました。寝直そうとしたがどうにも寝付けず、軽く夜風に当たろうと思い宿の外に出た。ラグーンが外に出ると、淡い光と共に微かな歌声が聞こえてきた。
――――この娘の可愛さ限りなく――――
ラグーンは不審に思い歌声の元に近づいていった
――――朝日を浴びて輝いて
風に吹かれてさまよって
静けさに響く君の声――――
村から少し離れた少しひらけた所にみゃあ♪が一人たたずみ歌を口ずさんでいた。その周りに月光蟲が飛び交い、淡い光を発して、ひどくはかない、それでいてとても優しい雰囲気をかもし出している。みゃあ♪はラグーンが来た事に気付き歌を止めた。
「いい歌だね。なんていう歌なんだい?」
「分かりません。幼いころ母が私によく歌ってくれていたんです」
みゃあ♪は少しうつむいてぽつりと呟いた。
「母は私のことどう思っていたのかな・・・こんな子供が生まれて・・・私の事がばれたせいで殺されて・・・」
そう言うとラグーンに背を向けてそれきり黙ってしまった。
ラグーンは1つ溜息をつくとみゃあ♪の帽子を取り上げた。
「あっ」
「そんなにそれ(耳)が気になるのかい?母親がみゃあ♪さんの事どう思っていたかなんて、その歌を聴けば分かるよ。もしみゃあさんのことを愛していなかったら今みゃあ♪さんがそんなに優しくその歌を歌えるはずがないじゃないか」
みゃあ♪は驚き大きく目を見開いた後聞き返した。
「そうかな・・・?」
「ああ、そうだよ。俺が保障する」
「ラグーンさんが保障ですか」
しばらく2人は押し黙っていたが、やがて同時に笑い出した。その時、遠くから2人を見つめている影に、みゃあ♪の正体がばれたことにまだ誰も気付いていなかった・・・。